都政新報
 
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市場幕開け~築地から豊洲へ(4)/引っ越し後/待ち構える「居残り問題」


  7日、午前5時過ぎ。日の出前でまだほの暗い築地市場から、多数のターレやフォークリフトが列をなし、豊洲市場へ向かって築地大橋を渡っていった。
 市場業者の引っ越しは、移転の前後で三つの期間に分けて実施中だ。そのうち中心となるのが、築地での営業が終了した6日正午から10日までに設定した「本引っ越し期間」で、11日の豊洲開場に合わせ、業者らは急ピッチで引っ越し作業を行った。
 環状2号線の一部の築地大橋を利用するのは特例的な措置だ。都は本引っ越し期間に限定し、ターレやフォークリフトの走行を午前5時~8時の間で認めた。
 環2を巡っては、市場移転で一部区間の完成や供用開始に遅れが発生。豊洲―築地市場間の道路はほぼ完成しているものの、一般供用には至っていない。そのため、初の築地大橋の自走を記念して、橋の中腹で写真撮影する業者の姿も見られた。
 この特例は、市場業者の利便性向上に加え、晴海通りなど周辺道路への交通負荷を減らすのが狙いだ。既に築地と豊洲の間にある晴海地区では五輪選手村を建設中で、工事関係車両への周辺住民の反発は根強く、市場関係車両の影響を少しでも抑えたいのが本音だ。そのため都は、豊洲が開場する11日から市場関係車両に限って、環2の豊洲―晴海間の上り線で通行を認める。
 本引っ越しは順調に進んだが、都が時間に追われる状況に変わりはない。中でも目下の課題に、環2の暫定迂(う)回(かい)道路の早期整備がある。
 迂回道路は、環2の地上部道路が完成するまでの間、築地市場跡地に暫定的に整備する往復2車線の通りで、これも晴海通りなど周辺道路の負荷を減らすのが目的だ。一般車両も通行可能となり、晴海など大規模マンション在住者ら地域住民の期待も大きい。
 市場に詳しい都中堅職員は「例えば豊洲市場に買い出しに行った業者が、午前7時に都心方面へ戻る際、晴海通りを利用すれば混雑が更に集中する。迂回道路の早期開通は必須だ」と説明する。
 都は迂回道路を移転完了から1カ月以内に開通させる方針だ。既に、本引っ越し前には、築地市場の西南エリアに隣接する築地川沿いの桟橋の舗装や、築地大橋につなぐスロープなどが概成している。同職員は「周りにも迷惑がかかる。開通は1日でも早い方が良い」と話す。
 一方、築地市場跡地に整備する五輪輸送拠点を巡っては、11日~17日が期間の「引っ越し調整期間」が一つの山場になりそうだ。ある都職員は「調整期間の最終日に、移転反対派による居残り問題が発生するだろう」と懸念する。
 水産仲卸の大半は、反対を主張していた業者を含めて移転を終えているが、一部業者が築地で居残り営業を行ったり、私有物をあえて残すなどして抵抗することが予想される。都中央卸売市場の職員は「解体工事では居残りを想定していない。重機で本格的に建物を壊すのは、足場を組んだり機器材の撤去などを行ってからだが、引っ越し期間が終われば全面的に工事現場になるので、出て行ってもらわないと困る」と心配顔だ。
 今回の市場移転は、五輪という事実上の終期があり、引っ越しや解体工事でのスケジュールの大幅な遅れは致命傷となる。ある仲卸業者は「場内での店舗移動とは違い、完成済みの場所への移動のため、事前にいくらでも準備ができた」と引っ越しを振り返ったが、都には居残り対策という難題が待ち構えている。
 

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