都政新報
 
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市場幕開け~築地から豊洲へ(7)/悪しき慣習/問われる業者のモラル


   18日午後1時過ぎ。豊洲市場の水産卸売場棟(7街区)の待機駐車場で、魚の切り身などを入れた発泡スチロールが少なくとも20分間、放置されていた。その後、運送業者がフォークリフトでトラックの荷台に商品を急いで積み込み、水産仲卸売場棟(6街区)に向かった。
 閉鎖型施設である豊洲では搬入から搬出まで一定の温度を維持するコールドチェーン(低温流通網)が可能だが、屋外での荷さばきにより完全に途切れてしまった。
 築地で行われていた悪しき慣習の一つが、開場から間もない豊洲でも引き継がれている。その原因は、豊洲が開場した11日に7街区の待機駐車場で一部の業者が荷降ろしや荷積みなどをしていた光景を見た業者が追随していることが挙げられる。市場業者は「誰かが始めると連鎖反応が起こり、『やらなきゃ損々』と言わんばかりに、日に日に屋外での荷さばきが増えている」と嘆いた。
 かつて市場に在籍していた都幹部は「豊洲開場の数年前に、ある事業者から7街区の待機駐車場を荷さばきするために狙っているという話を聞いたことがある」と明かした。豊洲で業者が屋外で荷さばきをする背景には、卸とスーパーなど小売店との直接取引の増加がある。この都幹部は「取引先から指定された搬入時間に遅れた場合、スーパーなどの営業に影響を及ぼしかねない。手っ取り早く商品の仕分けなどを行うため、一定の面積のある駐車場を使っている」と解説した。
 一方、水産仲卸売場棟の6街区でも衛生管理の徹底が求められる。水産仲卸業者はマグロなどの解体を店舗内で行うのがルールとなっている中、店舗の外側で解体する業者が見受けられるという。仲卸業者の一人は「手洗いなど衛生面を徹底して加工するのが通例だが、閉鎖型だから店舗外でも好き勝手にやっていいと思っているのではないか。保健所にとっては悩みの種になるはず」と推測する。
 さらに、6街区では築地と同様に小型運搬車「ターレ」が通る通路に商品が置かれている問題もある。ターレの通行の妨げになることに加え、商品を通路に置くことができない業者との間に不公平感が生じるため、業者の一人は「通路を使うのであれば使用料を取るべき。そうすれば、使用料も増え、都の収入になる」との展望を描く。
 水産仲卸で構成する東京魚市場卸協同組合(東卸)は、豊洲が2016年11月に開場する予定だった際、豊洲の店舗以外のスペースに商品を置いた場合、使用料を取ることを内々で了承していた。だが、東卸の加盟業者は「小池知事が明確な理由もなく市場移転を延期したため、うやむやになった」と憤る。
 これら6街区や7街区の問題に共通しているのは、一部の業者のモラルハザードだ。豊洲でルール違反が一気に拡大すれば、常習化し、築地と同じように無秩序状態になりかねない。
 市場問題に詳しい都幹部の一人は「最初が肝心」と前置きした上で、こう指摘する。「都と市場業界の代表が連携して屋外での荷さばきなどを巡回指導し、都が厳しい姿勢を見せることが大事。都は早く手を打つべきだ」
 

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