都政新報
 
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市場幕開け~築地から豊洲へ(5)/アスベスト/施工時の常時監視を


   「アスベストが一番心配」─。9月20日に中央区保健所で開かれた築地市場解体工事の住民説明会で、築地6丁目の住民が不安げに訴えた。根底には、築地市場周辺にアスベストが飛散して住民が吸い込んだ場合、肺がんなどの発症リスクが高まることへの懸念がある。
 これに対し、都側はアスベストの種類によって飛散リスクが3段階に分かれていると説明。「(リスクが最も高い)レベル1、2は飛散しやすく、作業状況を監視し、計測器を設置して飛散していないか確認する」などとして理解を求めた。
 築地市場の施設では、レベル1から3までのアスベストが存在する。解体する全155棟のうち、アスベストを含む施設は約35%の55棟を占める。一つの施設に複数のレベルのアスベストが存在するため、レベル1は25棟、レベル2が4棟、レベル3が43棟で、広範囲に及ぶ。
 アスベスト除去は築地を7工区に分け、10月から来年12月まで途切れることなく実施する予定だが、広範囲に及ぶ工事に都庁内からは「本当に終わるのか」「ずさんな工事にならないのか」と心配する声が上がる。中央卸売市場は「どの工事でも不安要素はあるが、雑にならないように工事をしっかり行い、この工期で実施していく」と話している。
 また、アスベスト除去は、解体業者が実施するのではなく、専門の協力業者に再契約するため、作業工程を不安視する声もある。築地市場の解体業者は「アスベストを除去する面積は広いが、作業スペースを細分化して除去を繰り返し行っていくので、(除去工事は)安心してほしい」としている。
 レベル1のアスベスト除去方法として、都は飛散防止剤をアスベストに塗布し、除去したアスベストを専用の袋で二重に梱包するといった手順などを例示しているが、屋外に飛散した場合は、業者だけでなく都も連帯責任を問われる事態となり、都の信用失墜にとどまらず、工事そのものに「待った」がかかる恐れもある。
 また、飛散リスクが低いレベル3を問題視する声もある。アスベスト診断士の養成などを行うJATI協会は本紙の取材に、「勘違いしてほしくないのはレベルに関係なく、アスベストを含んだ建材をたたけば、粉じんが舞うということ。レベル3のアスベストは飛散しにくいからといって安心しない方が良い」と警鐘を鳴らす。
 飛散防止に当たり、施工計画の内容と施工後の除去状況を第三者機関がチェックする必要性を訴えているのが、アスベストによる被害者を支援するNPO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」だ。解体業者から都に提出された施工計画のチェックは同センターが実施し、「必要があれば見直しを求めていく」という。
 また、同センターは施工後のアスベストの濃度や除去状況などを確認することになるが、「(広範囲であるため)チェックがどこまで可能なのか」と課題を挙げる。
 中央卸売市場は「アスベストセンターのチェックを受けて、大丈夫であれば次の工程に入る」と述べるように、適正にアスベストを除去するには施工段階での監視が鍵を握っている。
 

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