都政新報
 
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市場幕開け~築地から豊洲へ(3)/場外市場/変幻自在唯一無二の街に


   築地市場が6日に最終営業を終え、7日に閉場した。1935年の開場から83年。昭和、平成の激動の時代を駆け抜けた築地の歴史に、一つの終止符が打たれた。その傍ら、場内脇に広がる築地場外市場には、こんなコピーが踊っていた。「な、なんと。築地の『場外市場』は移転しないんですって!」
 コピーは複数の店舗の軒先に貼り出されたポスターに書かれていた。場内市場の移転に伴い、場外も移転するのではないか─。こうした誤解の防止が狙いだ。
 場外は場内と共に築地の街を活気づけてきた。刃物や調理器具、だし汁用の乾物など、場内の商いで不足する商品が自然発生的に場外で売買され、第二の市場として形成されてきた。両市場は二つで一つ。だからこそ「場外も移転」という誤認が生まれる。
 場外は場内と同様に業務用の市場だ。場外の売り上げの約8~9割が業務用とされ、場外商品は場内で購入した魚介や青果などと共に、近隣だけでなく全国各地の飲食店やホテル・旅館などに配送される。そのため、1日に3千~6千の商品が場内外を行き来する。
 市場移転に伴い、この商品物流をどう賄うのかが両市場業者の課題だった。まず、中央区を通じて場内跡地に5500平方メートルの荷下ろしや駐車場などに使う用地の確保に成功。加えて、飲食業界団体や運送業者などが一致団結し、場外と豊洲市場との物流確保にめどを立てた。場外団体幹部は「ここ1カ月でようやく話がまとまった。今まで通りの業務ができる」と語る。
 一方、現在の街には、昭和の時代にはなかった「観光地」という特徴がある。場内閉場前は、場内・場外を問わず、昼過ぎまで観光客が絶えなかった。同幹部は「業務用が基本なので、午前9時には仕事が終わっている。観光を意識した街づくりまで対応できない」と漏らす。
 観光の売り上げが主ではないにせよ、来街者が街の活気を増幅させているのは確かだ。このにぎわい維持を目的に地元の中央区が場外に建設したのが、商業施設「築地魚河岸」だ。魚介など約60の小売店が入居する。飲食店など小口の「プロ向け」がうたい文句だったが、市場移転延期で場内と併存。プロは場内で買い出すため、築地魚河岸には足を運ばず一般客がメインになり、前提が狂った。
 だが、こうした事態は思わぬ効用ももたらした。近隣住民ら一般客の固定化だ。築地魚河岸の業界団体代表は、「勝どき在住の客が週に2回来る。一般客も高価な商品を結構購入するので、売り上げの効果が大きい」と話す。
 場内が姿を消した今、観光客の足は遠のかないのか。同代表は「それなりに厳しいだろう」と予測しながらも、「人出が落ちないよう飲食など観光客向けの小売り機能を強めるのがいいかもしれない」と話す。
 他方で中央区幹部は「心配していない。都市内バザール的な場外の街の構造が人を引きつける」と分析。一方の豊洲市場内に開業予定の集客施設「千客万来施設」については、「大幹線で物流道路の交差部では人が近寄り難く、立地的にもにぎわわないのでは」(同幹部)と見通す。
 「築地は商売人の街だ」。場外団体幹部はこう語る。場内に即応して街を広げ、今では観光客相手にソフトクリームまで売り出す。状況に応じる柔軟性が抜きん出ていたからこそ、場外は多種多様な商店が所狭しとごった返す唯一無二の市場になった。今後もその性質は不変であろう。更に五輪後には、場内跡地は刷新され、新たなビジネスチャンスが到来する。
 

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