都政新報
 
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市場幕開け~築地から豊洲へ(2)/移転準備/場内に私有財産放置も


   築地市場から豊洲市場への引っ越し作業が2日、急ピッチで進められていた。事務所の2階の窓から1階に垂らした長い毛布の上を、引っ越し業者のスタッフが机や棚などをゆっくりと滑らせて運び出していく。エレベーターのない施設のため、重い什器(じゅうき)の搬出は手作業で行っている。
 豊洲への引っ越しは3段階に分けて実施する。都と市場業界でまとめた引っ越し計画では、築地閉場日前日の5日までを「事前引越期間」、6日から10日までを「本引越期間」、豊洲開場日の11日から17日までを「引越調整期間」と定めている。スムーズな引っ越しを実現するには、事前引っ越し期間にいかに多くの荷物を豊洲に搬出できるかにかかっている。
 築地の水産仲卸で構成する東京魚市場卸協同組合(東卸)の加盟業者の幹部は既に事務所の引っ越しを終え、豊洲で事務作業を始めているという。「店舗の引っ越しはこれからとなるが、全体の作業の9割は終わっている。だが、豊洲開場後に営業を開始する業者もいると聞いている。のんびりすぎるのではないか」と指摘した。
 引っ越し業者の選定は、各市場業者が個別に行った。東卸の早山豊理事長は7月の会見で、大手引っ越し業者から危険が伴う作業などを請け負えないと突き付けられたと明かし、苦戦している状況を説明した。また、ある市場業者がこの引っ越し業者に見積もりを依頼したところ、他の業者の2倍の金額を提示されたという。「この業者には依頼しなかったが、市場業界は足元を見られた気がする」と話す。
残置ごみの行方
 築地市場の業者は都から使用許可を受けて営業しているため、本来は閉場前に施設の原状回復を行わなければならない。ただし、都中央卸売市場条例では知事が認める場合、原状回復が免除される規定があり、今回は適用することを決めている。
 例えば、室外機を含む空調設備やダンベ(マグロを陳列する冷凍・冷蔵庫)、間仕切りなどは築地に残置することも可能だ。市場業者はダンベなど私有財産の権利放棄や原状回復の免除に関する申請書を知事に提出し、承認を受ければ、都が閉場後に処分する。
 市場業界では、残置ごみが膨大になるとの見方がある。ある業者は「都が肩代わりをしてくれるのはありがたいが、築地からごみを搬出するのはかなり時間がかかるかもしれない」と指摘し、築地解体工事への影響を懸念する。
 一方、残置ごみを活用した事実上の反対運動が起こる恐れがある。ある水産仲卸は「一部の移転反対派が権利放棄の申請書を提出しないようだ。築地閉場後も場内に私有財産のダンベなどが残ることになれば、都が勝手に動かすことはできるのだろうか」と疑問を呈した。
 都はダンベなど私有財産を処分する行政代執行に関して、「実施するかどうかは別として可能」との見解を示している。その根拠となるのが、施設の原状回復の義務違反だ。ダンベなどが放置されれば築地の解体工事に入れず、環状2号線の地上部道路の完成がずれ込む恐れもある。水産仲卸からは「反対派はだだをこねているだけで非常識。都は毅(き)然(ぜん)とした態度で臨むべきだ」と、都が行政代執行に踏み切る必要性に言及する声も上がっている。
 

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