都政新報
 
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小池都政2年~第2部 有識者に聞く(5)/都市づくり/長期計画、鉄道基金で前進/青山やすし(一社)都市調査会代表


  小池知事がどうこうは別にして、この2年間で舛添知事時代に手掛けた「都市づくりのグランドデザイン」をまとめた。2040年代をターゲットにした長期的な都市計画の考え方で、それに基づき、都市計画審議会の特別委員会で、用途地域や容積率の指定など今後20年間の土地利用の基本方針も作っている。
 都市計画は数十年単位で議論すべき問題だ。最近は1~2年程度で知事が代わっていたが、小池都政で議論が前進している。少子高齢化や成熟社会、激化する国際競争の進展など、情勢変化に対し、長期的な計画に取り組んでいる点は評価すべきだ。
 もう一つは、今年の第1回定例都議会で可決された鉄道新線建設等準備基金条例がある。今は東西線や総武線が混んでいるが、都市の混雑は次々にシフトするため、同基金には長期的な効果があり、高く評価する。
 今年度予算で優先6路線などの調査費を付けた。政治的な議論も大切だが、経済や都市活動、利便性、費用対効果など基礎的なデータを積み上げ、知事や都議会と議論すべきだ。路線の優先順位はデータを基に、政策企画局など計画部門と調整して決める必要がある。
 混雑率緩和から言えば、地下鉄8号線の優先順位が一番だ。東京は東部方面の地下鉄の輸送力が弱い特徴があり、東西線の乗客の分散に役立つ。他の視点では、羽田空港へのアクセス面で、羽田空港アクセス線や新空港線は都市構造上、効果的だろう。
 時差ビズを含めて働き方改革など様々な方策を打つ必要はあるが、ソフト対策や都心居住推進だけでは限界がある。情報化社会では、フェース・ツー・フェースの取引や交渉、情報交換による移動が増えると言われる。新しい時代に合った都市構造への不断の改善を抜きにはできない。
 かつて常磐線の混雑率が高かった時に、つくばエクスプレス(TX)を造った。当時はなぜ人口減少時代に国が出資しない自治体鉄道を造るのかなど、随分と批判されたが、できてしまえば、単に常磐線の混雑率が緩和しただけでなく茨城、埼玉、千葉との連携が進み、関東平野の都市構造が非常に改善された。今後のTXは東京駅や銀座、臨海方面への延伸が課題になる。
 鉄道だけでなく、圏央道や外郭環状道路、羽田空港の滑走路など、ハード整備には「予算を福祉に配分すべき」などの反対が起こるが、将来世代が東京で活動・生活していくという長期的な視点で議論すべきだと思う。
 一方、小池都政には難点もある。市場移転問題で、戦後70年の懸案事業だった環状2号線がすぐにできなかった。市場移転を立ち止まったことの評価はまた別だが、都市計画からすれば環2の遅れはマイナス点だ。
 築地市場跡地については、21ヘクタールの公共用地がこのエリアに出るのは二度となく、とても貴重だ。21世紀の東京に必要なものという観点が大切になる。周辺施設や世論的にも「食のテーマパーク」は100%いらないと言い切っていい。
 成熟社会を迎えた東京に欠けているのは、芸術や文化、スポーツ施設だ。芸術や文化施設は欧米に比べて絶対的に足りておらず、プロスポーツも、日本の経済力や成熟度からして、成立しないわけがない。他方、晴海を空地にしていたことで五輪が開催できたように、広場や公園にしておくのも一手かもしれないが、少なくとも世界中にあふれているショッピングモールは造るべきではない。
 都市計画は投資した知事ではなく、たいてい次の知事がテープカットする。立ち退きや多額の歳出など、票にとってはマイナスのため政治家には覚悟が要るが、後世の人の生活に役立つ。選挙で福祉に傾きがちなバランスをどうとるかで、政治家の真価や歴史的な評価が定まる。鉄道や大規模開発は国の協力が必要なので、小池知事にはそこでこそ政治力を発揮してほしい。
 

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