都政新報
 
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小池都政2年~第2部 有識者に聞く(3)/待機児童/保育士の処遇改善効果大/普光院亜紀 保育園を考える親の会代表


  今年4月1日現在の都内の待機児童数が3千人強と大幅に減少したことは、保護者にとって本当にうれしいことだ。小池都政で特に目立つのは、保育士の待遇改善で、効果が非常に大きい。月2万1千円の補助を行い、従来の施策と合わせ、都は計4万4千円の補助を出している。
 その結果、厚生労働省の昨年の賃金構造基本統計調査で分析すると、全国で都の保育士だけ年収が前年比で大幅に伸びていた。都内の女性の平均年収には及ばないが、全国の女子の水準に追い付いた形だ。保育士の資質は保育の質の根幹をなすので、待遇が良くなって人材が集まれば、保育の質が高まる。他方で、隣接県などから「都に保育士を奪われる」との悲鳴も上がっている。
 一方、猛烈な勢いで保育施設が増え、認可も認可外も質の格差が広がっているのが心配だ。
 そうした中、保育園を考える親の会も都に要望したが、小池都政が認可外の保育施設を指導・検査する巡回チームを作ったことは評価できる。ただ、このチームの構成員を10人から20人程度に増やしたとも聞いたが、その程度では巡回が追い付いていないのではないか。本来なら利用者が苦情などを寄せる窓口の設置なども必要だ。
 また、今年度に開始するベビーシッターの利用補助は、最初に耳にした時には「利用者は大変だな」と思った。ベビーシッターはマンツーマンなので質の高い保育を行える可能性がある一方、個人による密室での保育のため、担当者の質に大きく左右される。さらに、来る人が入れ代わり立ち代わりでは、子供にとっても良くないからだ。
 0歳~2歳くらいまでの子供は、特定の大人との愛着関係で心が発達し、それが体の発達につながることが発達心理学の研究で明らかになっている。そのため、ベビーシッターを導入するのなら、2人~3人のチームで運用するなど、子供の負担が少ない方法で実施してほしい。この施策で待機児童の保護者が助かるのは事実。本当に最後の救済策だと思う。
 都が保育所の面積基準を引き下げているのは喜ばしくない。区市町村が導入せずに実際の運用には至っていないが、都は特例措置を使って認可施設の0歳~1歳児一人当たりの面積を3・3平方メートルから2・5平方メートルに緩和するなどしている。
 認証保育所は実際に同2・5平方メートルで運営している施設が多い。本会の会員アンケートで「保育施設を見学して子供を預けたくないと思った理由」を聞いたところ、「狭い・窮屈」が最多だったが、ほとんどが認証保育所についての感想だった。2・5平方メートルで子供全員が室内にいれば、ひと目見て「狭い」と感じるのも無理はない。
 かつて0歳児の面積基準が5平方メートルだった時代もあった。いずれ保育施設が足りてきたら、高い基準に戻した上で運営も成り立つように支援するのが行政のあるべき姿だ。
 保育の質の向上に最も効果的なのは、保育士の人員増だ。保育士の離職理由の一つに、業務負担の大きさがある。都はかつて先駆的に保育士の増員を行っていたが、その後、削減し、その分は今、区市町村が担っている。待機児童が減ったこの機会に、都として再び先駆的な質向上策を打ち、区市町村を支援してもらいたい。
 今後も小池都政には質を守りながらの待機児童対策を頑張ってほしい。量と質がトレードオフ関係になってはならない。都内は五輪に向けて美しく改装されつつあるが、五輪で海外からきたお客さんが保育施設を見て「こんな狭いところに子供を押し込んでいるのか」と驚くことのないようにしていただきたい。
 

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