都政新報
 
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小池都政2年~第2部 有識者に聞く(1)/エネルギー/新たな制度の枠組みを/大野輝之/自然エネルギー財団常務理事


  都では、小池知事が掲げる「三つのシティ」を柱に待機児童や超高齢化対策、新エネルギーの普及などが進められている。小池知事が就任から2年を迎え、これらの政策はどこまで進み、今後はどう展開していくべきか、有識者に聞いた。

 環境行政に携わっていた石原都政時代を振り返って評価すると、ディーゼル車の排ガス規制とキャップ&トレード制度が2本の大きな柱だったと思う。パリが都のディーゼル車規制を参考にするなど、この二つの施策は10年以上、他の都市の先を行く取り組みだった。
 最近の都の環境行政を見ると、キャップ&トレード制度では第2期(2015~19年度)もしっかりと運営し、成果を上げているのは間違いない。先駆的な施策を維持し、推進するのは簡単ではなく頑張っていると思う。
 だが、国内だけではなく世界の都市の中でも先進的な取り組みが期待されている都に求められているレベルからすると、率直に言って十分とは言えない。パリ協定ができ、世界全体で脱炭素化を目指す時代となり、都よりもっと踏み込んだ気候変動対策に乗り出す海外の都市もある。都は今のレベルを超える必要があるが、残念ながらこれまでのところ、新しくて高みに挑むような施策を打ち出せていないと思う。
 小池知事は、ゼロエミッション東京というメッセージを打ち出し、都が環境エネルギー分野で先導しようという思いを強く持っていると感じる。ゼロエミッションは、温室効果ガスを実質ゼロにするというパリ協定の目標そのものであり、まさに進めるべき方向だ。
 問題は知事のメッセージを行政がどう実際の施策として具体化するかだ。ディーゼル車規制にしても、キャップ&トレード制度にしても、トップダウンではなく環境局から問題提起し、知事の了解を得て展開した。環境分野に強い思いを持っている知事がいるのだから、現役世代に対して厳しい言い方になるが、東京が果たすべき役割にふさわしい施策をしっかり知事に上げていく必要がある。
 都がやるべきことは環境目標に合致する企業活動のルールと枠組みを作ることだ。ディーゼル車規制もキャップ&トレード制度もそうであり、こうしたルールづくりをためらわずに問題提起すべきだ。枠組みを作ってから取り組みを実現していく過程で、支援が必要な事業者に対し、補助や融資を行うが、大きな枠組みを作ることなく補助金を支給するだけでは効果が弱い。現に小池都政で受動喫煙防止条例を作ったように、環境分野でも目標を掲げるだけではなく、それを達成するための仕組みを条例制定権も活用し、構築すべきだ。具体的な施策の内容は、現役の職員が考えることだが、例えば自然エネルギーや電気自動車を普及させるための制度が必要ではないか。
 東京五輪・パラリンピックの会場では、自然エネルギーを使うが、太陽光や風力など地域の資源を活用した自然エネルギーの活用を考えてほしい。また、五輪での自然エネルギーの活用が、その後の社会ルールとして定着するような取り組みにしてほしい。
 さらに、東京には先駆的な企業が多い。パリ協定以降、企業の動きは変わってきている。脱炭素化、SDGs(国連の持続可能な開発目標)など社会的に必要とされる取り組みを率先して行い、市場で評価されなければ、ビジネスとしてもやっていけないという認識が急速に強まっている。都は先駆的な取り組みを行う企業としっかり対話をし、互いに高めながら新しい環境施策を作ってほしい。それをやる素地が東京にはあるし、やってきたのが都の環境行政だ。
 

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