都政新報
 
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小池都政2年~1期目前半を振り返る(7)/逆算/知事選へ布石も職員冷ややか


   政治家は逆算するのが宿命なのか─。小池知事は昨秋の衆院選を前に結党した希望の党の党名を半年以上前の昨年2月に商標登録に出願していた。実際に設立したのは同9月25日。その翌日、第3回定例都議会の代表質問後、知事は報道陣にこう語っている。
 「まず希望の塾を立ち上げて、同時に誰かに取られるよりはと思って先に登録しておいた」
 だが、衆院選の結果は周知の通り惨敗に終わり、同党は今年5月にいったん、解散の運命となった。
 惨敗の引き金となったと言われる「排除発言」以降、知事は安全運転にかじを切ったという声が高まった。発言への慎重さが増し、毎週金曜の定例会見の質疑では、極力知った顔の記者を選んで指名する姿勢が強まった。都議会第1会派の都民ファーストの会幹部も「都庁内にはいろいろと調査の指示など出しているが、対外的にはやたらと発信しなくなった」と述懐する。
 しかし、衆院選を機に急落した支持率が回復の兆しを見せるのと歩調を合わせるように、知事は都内のイベントに数多く顔を見せ始める。
 「政治家の性質でもあるが、おとなしくして失点を減らすよりも、得点を取ったほうが良い。知事がじっと様子を見ているという見方は間違っている」。ある都議は衆院選後の知事をこう見る。その上で、「次の知事選を逆算する時期に入ってきた。その布石を打っているように見える。小池知事は政治家として眉毛の動き一つを捉える勘を持っている」と話す。
 布石の一つが7月20日の会見で発表した「東京ベイエリアビジョン(仮称)」だ。昨年9月に都都市整備局が2040年代の東京の都市像や基本方策などを示した「都市づくりのグランドデザイン」の臨海部版の位置付けで、東京五輪・パラリンピックを開催する2020年以降の具体的な成長モデルの提示を視野に入れる。今月2日には庁内の検討会を初開催し、若手有識者や都職員らで構成するワーキンググループで議論を重ね、来年末にビジョンを策定する方針だ。
 ところが、庁内からは冷ややかな声が漏れる。同ビジョンは港湾局などの下からの積み上げでなく、知事からのトップダウンで検討に入ったからだ。
 ある都幹部は「ビジョンの話は寝耳に水。臨海部は個々に問題を抱え、理想と現実にギャップがあるが、40年代に目標を設定したことで、利害関係者が誰も痛まない。ある意味、目くらましとも言える。ビジョンの公表は知事選まで1年を切った来年末で、次の任期を見据えてできる限りの弾を打ち込みたいのだろう」と話す。
「旧顧問」見え隠れ
 市場移転や五輪会場見直しの迷走、国政進出の表明などから、知事には「都政への理念がない」との批判がつきまとう。同幹部は「知事はこうした批判を気にしているのではないか。受動喫煙防止条例は大きな成果だったが、同ビジョンなど個別の政策を打ち出し、確固たる方針を示したいのだろう」と勘繰る。
 だからこそ庁内には「職員へのプレッシャーが高まっていく」との懸念の声も聞こえるが、「確固たる方針」を示すには職員との信頼関係の構築が必定となる。経緯を無視した思い付きのアイデアでは、現実的な骨太の方針とはなり得ないからだ。
 ここで退任したはずの特別顧問の存在がいまだ浮き上がる。知事への直接の影響がささやかれる学習院大学教授の鈴木亘氏やビジネス・ブレークスルー大学副学長の宇田左近氏らだ。鈴木氏は現に副座長を務める都の超高齢社会に関する7月の有識者会合で、「知事は将来手を付ける話ではなく、今できることはやりたいということで、来年度の予算になるような話は具体的な話をしたいという強いご意向がある」などと知事との直接の関係をにおわせる発言をしている。
 特別顧問など都政の文脈を無視したアイデアに飛びつく傾向が変わらなければ、「確固たる方針」などかなわない。都職員を知事自身のベクトルに向かせるには、まだ時間がかかりそうだ。
 

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