都政新報
 
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小池都政2年~1期目前半を振り返る(4)/対議会/意思決定公明が左右


   「被害はいまだ拡大とのこと。改めてお悔やみとお見舞いを申し上げます」。小池知事は15日、西日本豪雨災害にツイッターでコメントし、こう続けた。「都議会公明党から被災者への住宅提供など、都民ファーストの会からも迅速な対応要請を受けました」。このツイートには、両会派幹部が知事に要望書を手渡す写真が貼られている。
 両会派が要望したのは13日。同日には自民党、他の日には共産党と立憲民主党・民主クラブ(民主)も同様の要望を実施した。この3会派は都総務局や特別秘書を窓口にしたこともあるが、知事が公式ツイートで限定的な会派要望を投稿するのは、二元代表制を採用する自治体にとって公平性の欠如につながりかねない。知事就任以降、対立関係にある自民の都議は「自民の話は聞かないという表れだ」と非難した。
 小池都政で存在感を一層強めたのが公明だ。小池知事は反自民を鮮明に打ち出したのを一因に脚光を浴びたが、知事周辺は知事選後、真っ先に公明との調整に着手した。当時の第1会派は自民で、何としても第2会派の公明を取り込む必要があった。そして昨年の都議選で自民が「下野」。知事と公明の距離感は決定的に縮まる。
 知事は当初予算で公明に最大限配慮。2017年度には、一定収入以下の世帯の私立高校授業料無償化をのみ、18年度も数多の予算付けを実施した。ある公明幹部は「知事は公明の政策を理解している。今後の予算などで同様の対応だったら、知事選や都議選も知事側を応援するだろう」と語る。
 「都政の重要案件の大半は行政と公明で話をつけている」。都幹部からはこんな声が漏れる。
 公明は都議選以降、予算だけでなく特別顧問や入札制度改革、局長公用車の廃止など、重要案件を軌道修正させた。他の公明幹部は「変なことをやったら修正させる。今後も是々非々の姿勢で臨む」と話す。
 この「是々非々」を強調したのが17年衆院選だった。知事が国政に手を出し、公明は3度にわたって都政への専念を迫った。東村邦浩幹事長が怒りをあらわにし、「事実上の与党離脱」と報道されたが、都議会筋によると衆院選後、知事側は「何とか任期を全うさせてもらいたい」というシグナルを公明に送った。
 知事が「ブラックボックス」などと問題視したのは、自民の一部都議が都政の意思決定を左右する実態だったが、姿は変質。名実ともに「知事与党」の都民ファの数の力を背景に、公明の意向を全面に取り入れて都政を運営する形になった。
「野党」にも差
 「ただただ、むなしい」。ある自民都議はこう吐露し、「いくら正論を吐いても数の力で通らない」と都政の現況を嘆く。
 知事選に加え、都議選での大敗、知事による衆院選での反自民などが重なり、自民の知事への態度が和らぐことは想定しにくい。3年間未実施となる自民都連を通じた国予算への都の要望活動も、都議会自民が主体的に突っぱねた。他の自民都議は「謝罪しろとまでは言わないが、『反自民だったが政権与党の自民の協力が必要』と要望を再開したい本当の理由を言うべきだ」と指摘する。
 自民は18年度一般会計予算案に美濃部都政以来41年ぶりに反対。共産も反対したが、知事は自民に「大義は理解できかねる」などと即座に矛先を向けた。
 一方、民主の都議は「自民時代と違い、少数会派の提案も野田数特別秘書を通じて直前で前進答弁に変わることがある」と明かす。共産を含めた「知事野党」の意向が一定、反映されやすいのも小池都政の特徴だが、自民関係者は「特別秘書の姿を自民控室で見たことがない」と話す。「知事野党」内にも小池都政との距離に差が生じている。
 昨年の都議選で、都政は事実上の知事政党が第1会派を形成する異例の状況になった。次の知事選や都議選次第では、都政の意思決定過程が再び大きく変わる可能性があるが、少なくとも当面は現在の「知事与党」体制で都政は回っていくことになる。
 

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