都政新報
 
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小池都政2年~1期目前半を振り返る(3)/小池劇場/支持集めた勧善懲悪


   都庁会見室が記者やカメラマンでほぼ埋め尽くされていた。2016年9月10日の緊急会見で、無数のフラッシュを浴びた小池知事が明らかにしたのは、豊洲市場の盛り土問題だ。実はこの直前に共産党が会見を開くというプレスリリースを出していた。内容は伏せられていたが、同9日夜に盛り土問題を取り上げることを把握した職員から報告を受けた知事が強行した形だ。都幹部は「市場移転延期を打ち出した知事にとっては棚ぼたとなり、おいしいネタだったはず」と分析する。
 この盛り土問題も都政が「小池劇場化」した一例だ。いつ、誰が、盛り土しないことを決めたのか、「犯人捜し」を始めた知事は「都政の闇」に切り込むヒロインを演じ、都幹部らの処分に至る「勧善懲悪」が展開され、連日のようにワイドショーなどで取り上げられた。マスコミや世論から一定の支持を得たのは小池知事だった。
 一方、この劇場化に厳しい受け止めをしたのは都庁内だ。都がまとめた報告書では、盛り土の責任者が8人に上り、左遷された幹部もいた。都幹部は「不正もしていないのに、詰め腹の切らされ方がひどすぎる。自己顕示のためなら手段を選ばないのが小池劇場だ」と批判した。
 さらに、第二幕では豊洲移転を決めた石原元知事に矛先を向けた。石原氏に盛り土などに関する質問状を送り、就任前から係争中だった石原氏を相手取った豊洲の住民訴訟で、都の方針を見直す意向を示し、敵意をあらわにした。職員の一人は「まだ判決は出ていないので、この後始末は知事がすべきだ」と突き放した。
 大いに盛り上がった小池劇場だったが、結局、盛り土がなくても主要施設の構造部分に問題はなく、新たな工事も発生せずに収束した。都庁内では「本当に時間の無駄だった。今、振り返ると、都政を混乱させた小池知事自身が本当の悪者だったのではないか」と憤りの声が上がっている。
石原型望む声も
 小池劇場の転機は昨年10月の衆院選だ。知事自らが新党を旗揚げし、安倍政権を敵視して挑んだが、自身の「排除発言」などが尾を引き、惨敗に終わった。知事は「都政に専念する」と繰り返すようになり、劇場も幕を閉じた。
 だが、庁内では早くも次の小池劇場が幕を開けたとの声もある。それが受動喫煙防止条例案だ。従業員がいる店舗は屋内禁煙となり、国の法案よりも厳しい内容に定め、飲食業の団体は「売り上げが落ちる」などと猛反発。都庁内では「最後までこの規定を緩めなかったのは、反対する団体を抵抗勢力とみなし、世論の支持を得たかったのだろう。小池劇場は完全に終わっていないのではないか」との見方がある。
 劇場型政治は、突破力がなければ実現しない。都幹部は「これまでの小池都政は何かを練り上げるというよりも壊すことに重点が置かれていた。受動喫煙防止条例の制定は数少ない知事の功績になるかもしれない」と語った。今後は実効性を高めるため、従業員の確認を行う保健所設置区市と折り合いをつけることが課題となる。
 残る任期で小池劇場が再演されるかは不透明だ。都幹部は「職員などを敵に回す形での劇場型政治は望まない」とした上で、「石原元知事のように業界団体と調整してディーゼル車の規制などを行い、都民の支持を得た劇場型であれば問題はない」と強調した。
 劇場型都政と批判される小池知事のパフォーマンスだが、単なるワイドショーネタではなく、都政を前に進める手段にできるかが問われている。
 

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