都政新報
 
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小池都政2年~1期目前半を振り返る(1)/調整不足/政局重視で改革空振り


   都幹部は耳を疑った。昨年6月20日、小池知事が市場移転に関する緊急会見の開催を報道番組で知ったからだ。当然、一部の幹部を除けば、会見の内容も伝えられていなかった。この会見では、「築地は守る、豊洲は生かす」という基本方針が示され、移転推進派と反対派双方の批判を抑える内容だった。また、知事が側近とともに固めた基本方針には「豊洲は物流センター」などとすることが盛り込まれ、都庁内では「豊洲は終わった」とショックが広がった。
 この会見がセッティングされたのは前回都議選の告示3日前。都議選で知事が率いる都民ファーストの会を勝利に導くため、職員と論議を重ねず、政局にらみで動いていたことを示す。
 歴代の知事も職員と調整せずに意思決定するケースはあったが、特に知事選出馬時から都議会自民党を「敵」と見なして支持を集めるなど「政局重視」の小池都政では際立っており、豊洲市場の開場延期や、海の森水上競技場を始めとした五輪競技会場の見直しなどでも見受けられた。都幹部は「何か改善する狙いがあるわけではなく、ちゃぶ台返しをすること自体が目的だった。ろくに検討をせずに見直しありきの姿勢だ」と分析する。
 着地点を見定めずに調整不足のまま「改革」に取り組む姿勢は庁内にとどまらない。五輪の3競技会場の見直しのうち、知事は2016年10月、ボート・カヌー会場として宮城県登米市の長沼ボート場を候補に挙げた。知事は東京大改革を選挙公約に掲げてその実現を目指したが、最終的にボート・カヌー会場は計画通り、海の森水上競技場に戻っただけだ。
 記者会見で「大山鳴動してネズミ一匹」と指摘された知事は、3会場の見直しで計400億円のコストを削減したと強調したが、都職員の一人は「地元や組織委員会と調整せずに知事と側近で決めて迷走した揚げ句、関係者の期待を裏切った。その失望はコストでは計れないほど大きく、東京大改革の実験だったと思う。その後始末は職員にさせるのは無責任体質だ」と冷ややかだ。自民党幹部も「いろんな意見や要望がある場合は、きちんと調整して意思決定するのが民主主義。根回しをせずに好き勝手やるのは独裁だ」と批判した。

◆発破かけられ前進も
 ただ、小池知事の調整不足の姿勢は、一方で施策のスピード重視と表裏一体の関係にあることも確かだ。知事は都立公園大改革や結婚支援など8大プロジェクトを進めるに当たり、各局の次長や理事に政策企画局の戦略政策担当理事の辞令交付を行った際、「ダッシュが大事」などと指示した。
 この8大プロジェクトでは、来年度予算編成に向けて、具体的に進んでいる取り組みもあるという。都幹部は「知事は移り気というか、『機を見るに敏』というべきか分からないが、関心がなくなる前に検討を終わらせないといけない」と躍起だ。
 同プロジェクトの一つである国際金融都市・東京の実現では、昨年11月に国際金融都市構想を策定。その翌月にはロンドンの金融街「シティ」と都が金融教育などで連携を深めるための覚書を締結し、今年7月に首都大学東京とロンドン大学シティ校が相互協力する覚書を交わした。
 都幹部は「知事の発破は職員にとってプレッシャーだったが、国際金融では矢継ぎ早に結果を出している」と語った。別の幹部職員は「都市間競争を考えればスピードは必要な要素」と前向きだが、知事からスピードを求められるあまり、職員が重圧に耐えられるか気がかりだと漏らす。
 都庁内では、スピード重視は知事の焦りに映るとの指摘がある。昨年10月の衆院選で、知事は排除発言などで求心力を失い、支持率急落を招いた。
 ある職員は「早く結果を出して失地回復しようとしているのだろう。小池都政の1期目の後半は職員の尻をたたき続けるはずだ」と予想する。
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 小池知事が就任して今月31日でちょうど2年を迎える。対自民や劇場型政治、情報公開の徹底、突破力や発信力の高さなどは知事の政治姿勢を表すキーワードだ。これらを切り口に、小池都政の1期目前半を8回で振り返る。
 

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