都政新報
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宙に浮く移転~豊洲市場の開場延期(3)/技術職の壁/情報共有の意識不足

 
   豊洲新市場の施設下に盛り土が実施されていなかった事実が明らかにされるまで、中央卸売市場は施設の工法として「閉鎖型高床式」を採用すると議会などに説明してきた。閉鎖型高床式は施設下に4・5メートルの盛り土を実施し、その上に空間を設けて建設する方法だ。 施設下の盛り土が地下空間に変更された際に市場長だったのは、2009年7月に中央卸売市場長に就任した岡田至氏(現東京都歴史文化財団副理事長)。岡田氏は本紙の取材に対し、「就任後の事業説明で、職員から盛り土の上に空間を設ける閉鎖型高床式で施設を建設し、空間があることで衛生管理が向上すると聞いた」と語った。
 都が11年3月に大手設計会社の日建設計と豊洲の各施設の基本設計を発注した際、工法は高床式だった。だが、同6月に納品された設計書は現在の地下空間がある構造に変更されていた。都側と設計会社の協議で見直されたことになるが、いつ、誰の判断で変更されたか、意思決定の過程は21日にリオから帰国した知事への報告でも明らかにされなかった。
 中央卸売市場は、技術職の部隊として、土木職と建築職のラインがあり、土木職が土壌汚染対策を、建築職が施設整備を担っている。都庁内からは「土木と建築の仲が悪いとは思わないが、それぞれテリトリーがある。建築職が判断したと思われても仕方がない」との指摘が出ている。
 建築職の間では、マンションなどを建築する際、地下空間を設ける工法は当然視されている。土を盛った状態より、コンクリートで固めた地下空間の方が地盤の強度があると認識されていると見られる。
 歴代の中央卸売市場長は、職員から地下空間がある実態を知らされていなかったとされる。09年の都議選で市場移転に反対する民主党が第一党になり、築地市場の豊洲新市場への移転が危ぶまれており、当時を知る幹部の一人は「いかにして豊洲新市場への移転を実現するかに主眼が置かれてきた」と明かし、施設は二の次になっていたと見られる。
■風通しの悪さ
 豊洲新市場の5施設下に盛り土が実施されず、地下空間だった事実を知っていたのが中央卸売市場の技術職だったのに対し、事務職は今月10日の新聞報道まで地下空間の存在を認識していなかった。同市場の事務職の一人は「基本的に事務職は新宿の本庁舎、技術職は築地市場に常駐し、距離も離れている」と述べ、技術職と事務職の意思疎通の障壁があり、風通しが悪かったと指摘。また、この事務職は「国の役人が豊洲新市場を視察した際も、技術職が地下空間を案内することはなかった」と語った。
 中央卸売市場は、基本設計後も施設下に盛り土を実施したと議会に答弁してきた。同市場の技術職の一人は、本紙の「情報隠しではないか」という質問に対し、「現在、調査中」と述べるにとどまった。
 ある幹部は「職員が技術職から聞いた話では、報告するタイミングを逸したと語っているようだ。結果として、都民や議会から情報隠しと批判されても仕方がない。技術職の世界は独立王国になっているかもしれない」と肩を落とした。
 議会からはこれまでの答弁に対する批判が出ている。都議会公明党の東村邦浩幹事長は21日、小池知事に豊洲新市場で申し入れを行った際、これまでの都側の答弁を振り返り、「裏切られた」と露骨に不快感を示した。また、同日の会見で共産党の清水秀子政策調査委員長は「空間はないと言われていた。都民を欺くと思う」と批判した。
 元市場長の岡田氏は組織の在り方を問題視する。「盛り土がされていないという情報が市場長に説明されていなかった組織が一番問題だと思う。組織を監督するトップに問題があると言われても仕方がない」
 都が08年当時から現在までの市場長5人をヒアリングしたが、全容はいまだ解明されていない。小池知事は23日の会見で「無責任体制と言わざるを得ない。都政は不透明であることを、これからも続けていくかが問われている」と問題意識を示した上で職員の自律改革を求めた。「まな板の鯉が自ら包丁を振りかざして身を切るとは思わないが、ますはそこからやらないとダメでしょう」と知事。痛みを伴う改革は避けては通れない。
 

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