都政新報
 
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【天下一品・ふるさと味自慢】 天下一品・ふるさと味自慢1/会津を即座に取り戻す/福島県「こづゆ」

 
  会津のみそ汁は具だくさんである。おかずのようにみそ汁から栄養を摂取する。だから東京のみそ汁の具は物足りない。
 しかし、今日紹介するのはみそ汁ではない。汁物ではあるがしょうゆベースである。会津地方の伝統料理「こづゆ」である。私の田舎は、会津盆地のほぼ中心に位置する今は喜多方市に合併された塩川町というところである。9月の山車祭りの際に、必ず出されたのがこの祝いの汁物である。
 家によっては、正月や冠婚葬祭にも出されるというが、我が実家では、今や私の帰省の度に必ず出る。会津を即座に取り戻すことのできる一品である。
 昔は会津塗りの平べったいお椀に盛られ、お膳の上に載っていたが、今は普通のお椀で普段着のように出てくる。
 さて、材料であるが、基本は、里芋、ニンジン、貝柱、きくらげ、豆麩、しらたきである。これをしょうゆベースの汁物にする。豆麩はなかなか東京にはない。貝柱ときくらげは干物で水で戻すのが面倒なのか、最近、お袋は貝柱に代え、鶏肉、きくらげの代わりに生しいたけを使っている。正統ではないかも知れないが、これも結構いける。
 小さい頃は里芋が苦手で、またその里芋が大きくて、いつも残していた。最近でも里芋は少なめによそってもらうようにしている。
 「こづゆ」の歴史は、もともとは武家料理で、会津藩主が食べた「重」というものがルーツ?とか。「じゅう」というと「ならぬものはならぬ」の「什」を思い出すが、四方を山に囲まれた会津盆地は海から遠く海産物が手に入りにくいので、山の幸に加え、干物とはいえ貴重な海の幸を用いた「こづゆ」は高級なごちそうだったのだ。従って、貝柱ときくらげに代えて鶏肉と生しいたけを具材にしているのは、いかにも武家ではなく庶民のものである。
 地勢上、会津では保存が効くサメもまたお祝いの席で煮付けにしたりで重宝されている。サメは体内に尿素をため込んで浸透圧の調整を図っているが、絶命時に尿素が分解されアンモニアとなって、それが腐敗を防止し、通常の魚よりかなり長持ちするから、まさに会津に適している。秋祭りのお膳には、「こづゆ」と甘辛く炊いた「サメの煮付け」が並ぶのが定番であった。
 そしてもう一品。やはり冬の保存食であるニシンの山椒漬けである。身欠きニシンを山椒の葉を入れてしょうゆ漬けしたもので、酒飲みになるにつけ、たまらなく好きになってきた。ニンジンと秋に採ったキノコも入れて会津本郷焼きの独特の漬け鉢に漬ける。雪深い会津の熱燗(あつかん)にはこれに勝るものはない。
 これらのほか、わっぱ飯や馬刺しなども含めて、会津料理を出してくれるうれしい店が四谷にあった。両親が会津出身のM記者に紹介していただいた。その後に一度、味の濃いのが大丈夫な福島関係者と行ったが、最近行こうとしたら、もうその店はなくなっていた。ネットで検索したら、夕刊フジによると「会津や まっちゃん」は東日本大震災の影響で3月末、ファンに惜しまれながらのれんを下ろしていた。店長は東京での店舗の片付け作業を終え、4月2日に母の住む三春町に帰宅したのだそうだ。
 知らなかった。残念ではあるが、会津では芦ノ牧温泉や東山温泉などでも、これらの料理は出されるし、郷土料理の店ではどこでも出されていると思う。ぜひ、現地に出向いて食して欲しい。
 原発事故による風評被害、震災による自粛ムードの広がりなどを受け、4月当初には、3カ月先までの予約客が芦ノ牧温泉で約5万7千人、東山温泉では6万人ものキャンセルが出ていた。今、懸命に呼び戻しに頑張っている。ぜひとも、この夏休みには、会津さ行ってくなんしょ。
(中央卸売市場管理部長 塩見清仁)
 

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