都政新報
 
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私の青春シネマ13/Shall we ダンス?

 
   ごく普通の中年サラリーマンの杉山(役所広司)は、毎日自宅と職場を往復するだけの単調な毎日を送っていた。あるとき、帰宅途中の電車内からふと外を見上げると、とあるダンス教室に目がとまる。教室の窓から、物憂げに外を見つめる舞(草刈民代)の横顔に心がときめいた。舞と一度踊ってみたい、意を決してダンス教室に通い始めるが、練習に励むうちに社交ダンスに夢中になっていく。
 1996年公開。周防正行氏が脚本・監督を務めるハートフルコメディー。当時の日本アカデミー賞のタイトルを独占し、2004年にはアメリカでリメイクされるなど、まさに邦画を代表する作品である。
◆社交ダンスのイメージアップに寄与?
 「ダンス習っているのバレちゃったら、ただのスケベおやじだと思われますからね」
 ダンス教室のグループレッスンを初めて受けた後の居酒屋で、同じ生徒仲間の服部(徳井優)からこう指摘される。
 この映画が公開される前まで、社交ダンスに対する世間一般のイメージは、まさに場末のダンスホールそのものだったのかもしれない。いい歳したおじさん・おばさん(失礼!)が夢中になって何やってんだか、と。
 この映画は、そうした世間の率直な評価を正面から描きつつも、社交ダンスの競技面も強く印象づける。映画の大ヒットにより、世の中には社交ダンスブームが起こった。そして、健全で魅せるスポーツという社交ダンスのイメージ向上に一役買ったことは言うまでもない。
◆たまらなく好きなセリフ
 「最初は恥ずかしかったけど、踊っていると嫌なこと全部忘れて、なんか酔うっていうか、心臓が高鳴って、頭の中に花火が上がって、だからダンスを好きになって」
 強烈な個性を放つオバサンダンサー豊子(渡辺えり子)から、踊りも(・)気持ち悪いと馬鹿にされたレッスン仲間の田中(田口浩正)が、ダンスに対する思いを吐露するシーン。ダンスの魅力を絶妙に表現しているこのセリフがたまらなく好きだ。
◆自分も飛び込む
 私はこの映画が公開された直後に、大学の競技ダンス部に入部。大学1年の夏だった。ちょうど、ウンナン芸能人社交ダンス部が活躍し始めていたころだ。華麗なる社交ダンスの世界に、ちょっとしたあこがれと好奇心があった。ブームに乗った形で自分も社交ダンスの世界に飛び込んだ。
 ちょっとした下心があったのかもしれない。しかし、次第に踊ること自体が楽しくなってきた。大学の高学年にもなると、大会での優勝が明確な目標に。他校にゃ負けられんと、週2でレッスン。他の日は貸しスタジオで朝から晩まで猛練習。お陰で、小さな大会では何度か優勝させてもらえた。
 卒業時に贈られた寄せ書きのど真ん中に、大きな文字で「ダンスバカ」と書かれている。一生懸命、遮二無二練習していた姿が後輩にも伝わったか。
◆夢中で取り組む楽しさ
 同僚サラリーマンの青木(竹中直人)は職場では地味な存在だけれども、ダンスフロアに立つと、人が変わったように生き生きと踊っている。世界チャンピオンにあこがれ、カツラをかぶって踊りをまねた。多少いや相当気持ちの悪いクネクネとした動きは、観客の笑いを誘ったが、多かれ少なかれダンサーの心理はあのまんまである。
 この映画はもちろん社交ダンスの素晴らしさを訴えかけるものであるが、それ以上に、ダンスを通して何かに夢中になって取り組むことの素晴らしさを教えてくれる。そんな人は目の輝きが違う。
 毎日が単調に過ぎ、生活に張りのなさを実感したとき、この映画が何かのヒントを与えてくれるかもしれない。
(財務局経理部総務課庶務係 徳田洋平)
 

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