都政新報
 
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【2011統一地方選】序盤の選挙情勢

 
  

2011年統一地方選 序盤の選挙情勢
14区で区長選を実施/台東・墨田区は波乱模様
10市4町村で首長選/現職3氏が出馬表明


 23区では、来年4月の統一地方選で中央、文京、台東、墨田、江東、大田、世田谷、渋谷、豊島、北、板橋、練馬、江戸川の13区長選が実施される。中でも、台東区は現職区長と元参院議員が、自民党から推薦を受けるための予備選にもつれ込み、混沌としている。墨田区では、決算を認定しなかった自民党が現職を支援するか注目が集まる。世田谷区の熊本哲之区長は引退を表明し、候補者選びが本格化する。統一地方選から外れているが、5月には足立区長選も実施される。       

■中央区
 矢田美英氏(70)は7選出馬を表明し、自民党中央総支部も推薦を決めた。矢田氏は、民主や公明にも推薦依頼している。
 これに対し、自民区議の石島秀起氏(51)が今月12日に出馬表明した。矢田氏の多選を批判する自民区議にも、石島氏を支持する動きがある。石島氏は年明けにも離党し、民主党やみんなの党などに推薦を求める考え。地元の日本橋地区や、臨海部で建設が進む高層マンション住民らを中心に支持を訴える。
 このほか、共産が候補者を擁立する予定で、他の保守系区議にも立候補の動きがある。
■文京区
 現職の成澤廣修氏(44)は17日、出馬の意向を示した。ただ、区議会で表明などはせず、1月以降に新たなマニフェストを公表し、決意を示す方針。元民主区議で、前回は自民、民主、公明が推薦。今回も各党の支援が予測される。連合東京の西北部協議会が11月に推薦を決定している。前回は元都議の鳩山太郎氏が無所属で出馬し、保守票が分散した。
 共産は独自の支持候補擁立を検討。前回、元区議を擁立した会派「市民フォーラム」は見送る。
■台東区
 現職の吉住弘氏(69)、元自民参院議員の保坂三蔵氏(71)、元民主区議の中山寛進氏(38)の3人がすでに出馬を表明している。
 3選を目指す吉住氏は、自民区議、都議を経て無所属(自民推薦)で03年に初当選。前回は自民、公明が推薦した。
 保坂氏が出馬を決めたため、自民党台東総支部は推薦の一本化に向け、予備選の開催を決めた。19日に告示し、郵便投票を25日まで行う。有権者は同支部の党員など約1800人で、27日に開票する。予備選を統括する総支部長の服部征夫都議は「党員による公開の予備選を通じて、地域に根ざした党の活力づくりにつなげたい」と話す。
 中山氏は8日に民主党の推薦が決定。前回と同様、無所属で出馬する見込み。区内各所に蓮舫参院議員との2連ポスターが張られ始めた。
 共産は前回、保守系元区議と政策協定を結んだ。現在、台東地区委員会などで独自候補の擁立などを模索している。
■墨田区
 現職の山崎昇氏(65)が4選出馬を表明。前回推薦の自民、公明、民主に推薦を依頼する考え。
 自民は「山崎氏を含めてゼロから候補を選ぶ」とし、11月から選出方法や候補者像などの聞き取りを始めた。同党支部幹部によると、20日ごろに、出馬を検討中の現職区議、民間関係者、山崎氏など数人に絞り込み、最終的な選定作業に入る。当初は年内決定を目指していたが、年越しも想定している。公明と連携して調整を図る方針。
 民主は前回、山崎氏を推薦。現職区議3人が各々1人会派で活動するなど、基盤が弱いこともあり、同党関係者は「独自候補の擁立は非常に困難」としている。
 共産は1月ごろから、確認団体による候補者擁立の動きなどを受けて、党の姿勢を決める方針。
■江東区
 前回区長選で自民・公明の推薦を受けて初当選した山崎孝明氏(67)が再選を目指す。
 前回選挙に出馬し、約5万5千票を獲得した元区議の川北直人氏(36)も民主の推薦を受け、立候補を表明した。共産も独自候補の擁立を予定。
 同区は、みんなの党の柿澤未途代議士の地元で、独自候補の擁立がうわさされる。同党関係者は、「現職が出馬表明しており、独自候補の擁立は極めて慎重に検討する必要がある。区議選候補者の選定作業の延長線上で考える」としている。
■大田区
 6人が名乗りを上げた前回選挙では、自民の推薦を受けた松原忠義氏(67)が、態度を明らかにしていなかった公明支持層を取り込んで約8万5千票を獲得。次点との差約9千票で乱戦を制した。松原氏は再選出馬を表明し、すでに自民が推薦を決めている。
 自民区議8期で、元議長の永井敬臣氏(66)も出馬の意向。地元東京4区の平将明代議士(自民)と会談し、「除名も辞さない」と立候補する考えを伝えた。永井氏は「4年間の区政運営を見て、計画ばかり作って実効性に乏しく、部長職を倍増させるなど、区長選で民間出身を標榜( ひょうぼう)したとは思えない」と話す。現在、みんなの党に推薦依頼している。
 また、6月に自民党を離党した区議2期の湯本良太郎氏(34)も出馬の考えを固めた。羽田空港跡地利用で、展示場整備を検討している現区政を批判。「莫大(ばくだい)な財政負担が予想され、稼働率を見ても展示場を整備する利点はない」としている。
 このほか、共産も候補者を擁立する予定。民主は態度を明らかにしていない。乱戦が予想され、今回も公明党の動向が鍵を握る選挙になると見られる。
■世田谷区
 現職の熊本哲之氏(79)が11月に不出馬を表明し、後継に越智隆雄元衆院議員(46)の名前が浮上している。だが、保守系区議は「越智氏で固まってはいない」と話す。祖父が福田赳夫元首相、おじは福田康夫元首相で、総理の家系。「国政で勝負すべき」という声が自民党内にある。
 また、東京6区選挙区支部長という立場にあるため、越智氏が区長選に出馬した場合、後任の衆院選予定候補を決める必要がある。自民区議は「支部として年内に判断したいという思いはあるが、どうなるか分からない」と話している。
 民主や共産も、独自候補を擁立するかどうか、白紙の状態。みんなの党は、擁立するかどうか検討中だ。
■渋谷区
 現職の桑原敏武氏(75)は3選出馬を表明している。前回は、自民と公明の推薦を受け、再選を果たした。今回、自民、公明はまだ推薦を出していない。
 99年の区長選で、桑原氏の選対本部長を務めた元自民都議の矢部一氏(59)は前回、反旗を翻して出馬し、約2万票で次点に泣いた。告示約2カ月前に出馬表明して出遅れたが、今回は11月に後援会に出馬すると伝えている。「思いつきで進めている桑原区政の刷新」を訴え、区議会のインターネット中継、区役所のスリム化などを掲げる。
 民主は長妻昭前厚生労働相が候補を公募した結果、元衆院議員の樽井良和氏(43)に白羽の矢を立てた。「現職の批判はしない」と述べ、ファッション文化を伝え、「世界の渋谷」を狙う。
 共産は独自候補を立てるか白紙の状態。
■豊島区
 現職の高野之夫氏(72)は4選出馬を表明している。前回は、自民、公明、民主、社民の推薦を受け、盤石の態勢だった。各党はまだ推薦するかどうか態度を明らかにしていない。
 みんなの党の推薦を受けた日野克彰区議(49)は、現区政が進める大型開発を批判し、税金の使い道の是正を訴える。
 民主は、独自候補を立てるか未定だが、出馬の意向を示す区議もおり、今後の調整となる。共産は、独自候補を擁立するかどうか決めていない。
■北区
 現職の花川與惣太氏(75)が3選目を目指す。前回は自民、民主、公明が推薦、社民が支持した。共産が推薦する候補との一騎打ちでは5万票差で圧勝した。1期目も自民と公明が推薦、民主が支持しており、3党による支援の継続が濃厚。
 共産は地区委員会を中心に、推薦候補などの擁立を検討している。
■板橋区
 現職の坂本健氏(51)が出馬を表明。自民都議の1期半ばで転身した前回は、無所属で自民が推薦したが、選定結果を巡って党内が混乱。盤石の体制ではなかったものの、石塚輝雄前区長の支援などもあり、ほぼダブルスコアで完勝した。
 民主は前回、元ベテラン区議を推薦候補に擁立したが、得票は伸び悩んだ。今回は、民間からの推薦候補の擁立などを検討中だ。党への逆風も影響し、最終決定までには時間を要する模様。
 共産は、独自候補の擁立などを模索する。
■練馬区
 現職の志村豊志郎区長(78)は15日の第4回定例区議会最終日に、地域医療の課題に「これからも全力を尽くす所存」と述べ、3選出馬する意向を示した。前回推薦した自民や公明は、まだ態度を明確にしていない。
 民主は、推薦候補を公募し、現在選考している。1人に絞り込めていないため、東京9区の木内孝胤、10区の江端貴子の両総支部長に人選を一任している。
 共産は、独自候補を擁立するかどうか決まっていない。
■江戸川区
 現職の多田正見氏(75)が4選出馬を表明。スーパー堤防事業を巡って、現区政と対立する民主党東京16区総支部は、独自候補擁立のため公募をかけている。同支部は「短期決戦でも勝てる候補を探している」としている。共産は擁立を検討中。
■足立区
 選挙は5月8日告示、15日に投開票される。現職の近藤やよい氏(51)のみが、再選を目指して出馬表明している。前回、自民、公明、民主の推薦を受け、11万票余りを得て、革新系候補に約5万票の大差で圧勝した。
 民主、共産はいずれも、独自候補を立てるかどうか検討中という。


 都内市町村では来年、10市4町村で任期満了に伴う首長選が行われる。このうち、4月24日投開票の統一地方選挙は、三鷹、小金井、東村山、国立、東大和、清瀬、稲城の7市と、檜原村、大島町で行われる。現時点では、三鷹、東村山、東大和の3市長が出馬を表明する一方、稲城市の石川良一市長が今期での勇退を表明し、今後の動きが注目される。他方、議員選挙は20市9町村で行われ、このうち統一地方選では19市6町村となる。

◆三鷹市
 現在2期目の清原慶子市長(59)は、第4回市議会定例会で新政クラブの一般質問に答える形で出馬を表明。「来期も諸課題の解決に向け、市長として責務を果たしていきたい」と決意を述べた。
 清原氏は、03年の選挙で自民、公明の推薦を受けて初当選し、前回選挙では民主の支持も獲得。共産が推す元市議との一騎打ちで、相手候補の3倍以上となる4万9570票を得て再選を果たした。
 現時点で現職以外に出馬の意向を示す候補者はいないが、前回の選挙で対立候補を立てた共産党は「候補者擁立に向けて検討中。無所属で、超党派で推せるような候補者を立てたい」と話す。
 選挙では、市が東京多摩青果三鷹市場跡地に計画する市民センター周辺開発計画についての是非や事業の進め方、外環整備の是非などが争点の一つとなる見通し。
◆小金井市
 現在3期目の稲葉孝彦市長(66)は、第4回市議会定例会の記者会見で「これまでも4定で出馬を表明したことはない」(稲葉氏)と話し、態度を明らかにしていない。
 共産党は市民団体と連携しながら候補者擁立を固めつつあり、年明けにも出馬表明する模様。このほか、他の市民団体からも候補者を擁立する動きがあり、前回同様、三つどもえの選挙戦となる可能性もある。
 同市の最大の課題は、ごみ処理施設問題。国分寺市との可燃ごみの共同処理に向け、新たな清掃工場建設地を二枚橋衛生組合跡地とすることを行政決定したが、同用地にまたがる調布市は自市内に建設させない意向を示すなど計画は宙に浮いている。この間の市政運営の責任を問う声も強いが、ごみ問題については、野党から「政争の具にしていけない」との声も聞かれる。いずれにしても、新市庁舎の建設場所を巡る市政の混乱なども含め、稲葉氏の市政運営の是非が問われることになる。
◆東村山市
 渡部尚市長(49)は、9月の第3回市議会定例会で早々と出馬表明した。
 前回選挙は、西武新宿線東村山駅西口再開発を主な争点に、新人同士の三つどもえとなったが、渡部氏は細渕一男前市長の後継として自民、公明の推薦を受け、盤石の態勢だった。
 ただ、今回の市長選を巡っては、水面下で様々な動きも伝えられる。歯科医院長の折笠広樹氏(59)が近く出馬表明する考えを示しているが、同氏については前市長の細渕氏が推す動きもあり、保守層内の動きが注目される。自民党は24日の総支部会議で態度を決める模様。また、公明党は「基本的には現職優先」としながらも、情勢を見極めて判断する考えを示す。
 また、共産党も市民団体と連携して候補者擁立に向けて検討を進めている。前回選挙では再開発反対派の候補者を一本化できずに分裂したが、2人の得票数を足せば渡部氏を超えており、今回は何としても一本化したい考え。
 選挙では、都市整備の進め方が一つの争点となる。現在検討が進む西武新宿線の高架化では、市に100億円の負担が生じることとなり、厳しい財政状況の中、事業のあり方や進め方などが課題となりそうだ。
◆国立市
 現職の関口博市長(56)を含め、現時点で名乗りを上げている人はいないが、関口氏は再選出馬に前向きと目されている。前回選挙では、上原公子前市長の後継として出馬。共産、社民、ネットの推薦を受けた。新人同士の三つどもえとなったが、自民、公明が推す次点候補者に1千票差となる1万4707票で逃げ切った。
 ただ、与党体制は盤石ではない。共産党は、昨年11月の市議会臨時会で出された補正予算や今年度の本予算に駅前開発等の予算が盛り込まれたことから反対。「公共料金値上げも打ち出しており、『市民の暮らし第一』『大型開発反対』の立場に立ち戻るよう訴えている」(共産党)という。政党としての支持は、市長の対応を見て判断する考えを示す。
 上原・関口体制の革新市政が3期続いたが、保守会派も「現在、市政奪還に向け、候補者を選考中。必ず対立候補を立てる」(自民党新政会)と話しており、今回も激しい選挙戦が予想される。
◆東大和市
 選挙に向けて具体的な動きが最も活発なのが東大和市だ。現職の尾又正則市長(64)が、今月1日に幹部職員を前に出馬を表明し、5期目への意欲を示したのに続き、15日には同市議(政策の会)の小林知久氏(33)が出馬を表明。施策の複合化による事業の効率化などを訴える考えを示した。
 このほか、前回選挙で現職と一騎打ちとなり、200票の小差で落選した尾崎保夫氏(61)も出馬に向けて準備を進めており、年明けに正式表明する見通し。
 同市長選は毎回、激戦となっている。前回、前々回と一騎打ちの戦いを現職が制した。5期目に臨む尾又氏の多選の是非なども争点となりそうだ。
◆清瀬市
 4期目の星野繁市長(76)が5選目を目指すかが最大の焦点。星野氏は、前回選挙でも「3期12年を一つの区切り」との考えを示していたが、周囲の要請で4選出馬を決意した経緯がある。今回も関係者からは、「様々な調整をしているという話を聞いている」との声が聞かれた。多摩地域の首長では、もっとも高齢の76歳という年齢もあり、その去就が注目される。 
 他方、99年の選挙以降、政党推薦候補を擁立してきた共産党だが、現時点では表立った動きは見られず、「全くの白紙、未定の状態」(共産党)。与野党とも、具体的な動きは現職の動向を見ながらの判断となりそうだ。
◆稲城市
 現職の石川良一市長(58)が16日に次期市長選に出馬しない考えを示したため、一気に混迷度が増した。石川氏は後継を指名しない考えで、各会派の動きが注目される。保守系議員からは、「現時点では、会派内でも話し合っておらず、白紙状態」との声が聞かれ、候補者擁立の動きは今後本格化する。
 一方、95年の選挙以降、市民団体と協力して対立候補を擁立している共産党は、今回も市民団体とともに候補者擁立に向けて動きを進めている。これまで協力して運動を進めてきた別の市民団体が、候補者を立てるための準備を進めており、同団体との連携も視野に検討を進めている状況だ。
 選挙では、大型の区画整理事業が計画される中、その是非などが争点の一つになる。
◆檜原村
 現時点では現職を含め、出馬表明していない。現職の坂本義次村長(65)は現在2期目。現職引退に伴い16年ぶりの選挙戦となった03年に初当選し、前回の選挙は、自民、公明の推薦を受けて立候補したが、他に立候補者がなく無投票当選となった。
 坂本氏については非常勤職員に対して支払った手当の違法性を争う住民訴訟が05年に起こされ、今年2月に支給を違法とする判決が確定した。しかし、現時点でも村に返還されておらず、別の住民訴訟も起こされている。村内には、こうした村政の状況を問題視する声もあり、対立候補擁立の動きに発展する可能性もありそうだ。
◆大島町
 現職を含め、出馬表明の動きは現時点ではない。現職の藤井静男町長(65)は現在3期目。町議会副議長の候補者と争った前回選挙は、764票差で勝利し、再選を果たした。
 前回選挙と同様、人口減少に悩む島の活性化対策や高齢者施策、経済・観光振興などが主な争点となる見通し。
統一選以外の/首長選
 統一地方選以外の首長選では、立川市、青梅市、あきる野市、御蔵島村、小笠原村の3市2村が11年に任期満了を迎える。いずれも7月以降の選挙となり、現時点では出馬表明等はない。
 青梅市の竹内俊夫市長(66)は、現在3期目。12年前と8年前の選挙は同じ顔触れで争われ、前回選挙では35歳の無党派候補に対し、自民、公明の推薦を受けた現職が、357票の小差でかわす大激戦となった。
 また、立川市の清水庄平市長(65)と、あきる野市の臼井孝市長(69)は、ともに現在1期目。前回選挙は、立川市が新人5氏、あきる野市は同じく4氏の乱戦を制した。
 御蔵島村の広瀬久雄村長(62)は、新人2氏の争いとなった前回選挙で初当選。小笠原村の森下一男村長(61)は、三つどもえとなった前回、前々回の選挙を制し、現在2期目となる。

 

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