本土から約1千キロ離れた東京都・小笠原村は世界自然遺産の島として知られるが、戦争の記憶が色濃く残る場所でもある。戦後80年の節目の年に小笠原・父島を訪れた。
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「戦後80年といっても、それほど盛り上がっている感じはないですね」。そう話すのは、戦争遺跡ガイドツアーを企画するマルベリー代表の吉井信秋さん(63)。節目の年に関心が高まっていると思っていたので肩透かしを食らった感じだ。
ツアーは1日と半日コースがあるが、「限られた滞在日数の中、1日を戦跡ツアーに充てる人は少ない」と吉井さん。かくいう記者も到着した午後の半日ツアーの参加だった。もちろん他の取材との関係ではあるが、魅力あふれる島で限られた時間では、それもうなずける。
父島に戦跡が多く残るのは、ここが日本軍にとっても連合国の米軍にとっても戦略上の要衝だったからだ。