東京都の2026年度予算案が1月30日に発表され、2月18日に開会する第1回定例都議会に提出される。26年度予算案は、「『2050東京戦略』の迅速かつ確実な実行に向け、大都市東京の強みを遺憾なく発揮し、明るい未来を実現する予算」と位置付け、編成された。一般会計の予算規模は、9兆6530億円となり、「人」が輝き、活力に溢れ、安全・安心な東京へとさらに進化させるための取り組みに重点的に予算配分した。積極的な施策展開と持続可能な財政運営の両立を図るため、26年度予算編成では、事業評価における評価指標の義務付けや類似事業の整理・統合等を通じた見直しの強化など、施策の効率性・実効性の更なる向上を図っている。また、基金は施策の推進に向けて積極的に活用しつつ、一定の残高を確保するとともに、都債残高を着実に減少させるなど、将来の財政需要を見据えた財政対応力の堅持にも配慮された予算となっている。予算案の概要を財務局が発表した資料をもとに特集する。
■予算編成の基本的考え方
○予算編成方針
「2050東京戦略」の迅速かつ確実な実行に向け、大都市東京の強みを遺憾なく発揮し、明るい未来を実現する予算と位置付け、次の点を基本に編成した。
1 将来にわたり東京が世界の成長を牽引し続けられるよう、「人」が輝き、活力に溢れ、安全・安心な東京へとさらに進化させるための施策を、時代の変化を捉えた新たな視点で、スピード感を持って積極的に展開する。
2 AIの徹底的な利活用などにより、都民が真に「実感」する行政サービスの向上を図るとともに、より成果重視の視点から、社会の変化への的確な対応と施策の効率性・実効性の向上に向けて、事業の見直しを徹底し、強靱で持続可能な財政基盤を堅持する。
■財政規模
財政規模(表1)のうち、一般会計の予算規模は、前年度比5・4%増の9兆6530億円、うち政策的経費である一般歳出は、前年度比5・4%増の7兆2678億円、特別会計及び公営企業会計を含めた全会計の合計は、前年度比4・7%増18兆6850億円となった。
○歳入の状況(表2)
▽都税収入
都税収入は前年度比6・6%増7兆3856億円となった。
○歳出の状況(表3)
▽経常経費
経常経費は前年度比6・9%増の6兆1354億円であり、うち給与関係費は前年度比6・3%増の1兆8733億円となった。給与改定に伴う増などにより、前年度に比べて1113億円の増となった。
▽投資的経費
投資的経費は前年度比2・5%減の1兆1324億円となったが、大井コンテナふ頭の再編整備に要する用地取得費の減などを除くと、6・4%の増となっている。
強靱な首都東京の実現に向けた取り組みや、便利で快適な交通・物流ネットワークの形成に向けた取り組みを推進するなど、高い効果が得られる事業に財源を重点的に配分した。
▽目的別内訳(表4)
構成比が最も高い分野は、福祉と保健(25・8%)、次いで教育と文化(21・9%)、警察と消防(14・6%)の順となる。
限りある財源を重点的・効率的に配分し、都民生活の質の向上に努めている。
■財政運営
○施策展開の視点
AI等の技術革新、人口減少に伴う労働力不足、グローバル市場の環境変化、深刻化する気候危機など、我が国や都政を取り巻く状況は、急速に変化している。
社会経済情勢が不確実な中、「世界で一番の都市・東京」を実現していくため、喫緊の課題への対応に加え、子供・子育て家庭への支援や国際競争力の強化、都市の強靱化など、「2050東京戦略」に掲げる施策を力強く展開し、明るい未来への挑戦を牽引していく。
◇一人ひとりの「叶えたい」を支え、子供・若者の笑顔があふれる都市
◇誰もが輝き、自らの可能性を存分に発揮できる都市
◇日本を力強く牽引し、世界をリードする金融・経済都市
◇憩いと潤いに満ち、世界を惹きつける成長と成熟が両立した都市
◇世界のモデルとなる持続可能な環境先進都市
◇世界一安全・安心でレジリエントな都市
◇「スマート東京」「シン・トセイ」の推進
◇多摩・島しょの振興
○持続可能な財政運営
26年度予算編成では、予算要求段階でのマイナスシーリングに加え、事業評価による見直しを強化し、財源確保額は1350億円と過去最高となった。
さらには、補助金の執行状況の総点検を行い、過去の実績を踏まえ、56事業、126億円を精査した。
また、基金残高は、リーマンショック前とほぼ同水準を確保するとともに、都債についても、将来世代への負担も考慮し、残高を減少させている。
○基金の活用(表5)
25年度最終補正予算では、ゼロエミッション東京推進基金と新築建築物再生可能エネルギー設備設置等推進基金にそれぞれ500億円、あわせて1千億円を積み立て、将来にわたり、脱炭素化等の都政の重要課題の解決につなげていく。
26年度予算では、東京強靱化推進基金を2652億円、社会資本等整備基金を1844億円など、合計で8381億円を取り崩して活用する。
26年度末における、三つのシティ実現に向けた基金と財政調整基金等の残高見込みは、1兆4505億円となっている。
「人」が輝き、活力に溢れ、安全・安心な東京へとさらに進化させるための施策を積極的かつ着実に推進するため、将来の財政需要の動向などをしっかりと見極めながら、引き続き、中長期的な視点に立ち、戦略的な基金の活用を図っていく。
○都債の活用
26年度予算においても、将来世代への負担も考慮しながら計画的に活用することで、都債残高は、前年度に比べて119億円減の4兆2372億円となった。
また、都債の発行額は前年度当初予算に比べて192億円増の2226億円となった。
なお、起債依存度は2・3%と、国や地方と比べて低い水準を維持している。
■事業評価・政策評価・グループ連携事業評価
限られた財源の中で都政の諸課題に的確に対応していくため、都は予算編成の一環として、次の三つの評価を一体的に実施している。
(1)一つひとつの事業を検証し効率性・実効性を向上させる「事業評価」
(2)目標の達成度等を踏まえ施策全体の方向性を評価する「政策評価」
(3)政策連携団体が行う事業などについて都の施策目標への寄与や取り組みの方向性を評価する「グループ連携事業評価」
事業評価では、より成果重視の観点から、新たにKPI(評価指標)の設定を義務付けるほか、外部有識者意見の更なる活用を図るなど、制度をバージョンアップした。その結果、1604件の評価結果を公表するとともに、1261件の見直し・再構築につなげた。
政策評価では、局横断的な取り組みを含む10事業ユニットについて、行政データの一層の活用を図るとともに、ユニットを構成する各事業の効果や課題等を体系的に整理した上で定量的に把握・分析し、効果的な事業の構築につなげた。
グループ連携事業評価では、都民目線に立った目標への見直しや実績に応じた事業目標の引き上げを促すなど、ブラッシュアップに取り組んだ。
○事業評価の種類
▽事後検証による評価
▽自律的経費評価
▽重点テーマ評価(デジタル、広報、出捐金)
○事業ユニット一覧
▽都立スポーツ施設の有効活用
▽稼ぐ農業経営の展開
▽多摩・島しょ地域における移住・定住の促進
▽デジタル人材の確保・育成
▽ボランティアの活性化
▽防犯ボランティア活動等の充実
▽民間建築物の耐震化
▽介護需要に対応した施設整備の推進
▽がん検診受診率向上に向けた取り組み
▽不登校対応
○事業評価の実施例
▽事後検証による評価(成果重視の視点に基づいた検証の実施)
・インターネット利用適正化・性被害等防止対策〔現状・課題〕
約9割の保護者が子供のスマートフォン所持に不安がある一方、フィルタリング設定率は49・6%と半数以下であり、保護者のネットリテラシー向上を支援することが重要である。スマホ利用の低年齢化が進行する中、既存事業では小学生以降への啓発が中心であり、未就学児とその保護者への啓発が課題となっている。
〔26年度における見直し内容〕
インターネットの正しい利用に関する情報を集約した、ポータルサイトを新たに構築するとともに、未就学児の保護者を中心に、子育て情報誌や体験型イベントにより啓発の充実を図ることで、保護者全体のネットリテラシーの向上を目指す。
〔KPI(評価指標)〕
フィルタリング設定率30年度70%
○政策評価の実施例
▽都立スポーツ施設の有効活用
〔施策目標(主な成果指標)〕
・都立スポーツ施設が果たしている役割に「満足」と答えた都民の割合
24年度60・7%→30年度65・0%、35年度70・0%を目指す。
〔課題〕
・都民の満足度について、施設利用の有無が施設に対する満足度に一定の影響を及ぼしていることが
調査結果からも確認されていることから、スポーツ及びコンサートなど施設の多目的な利用を推進
し利用者数の増加を促すほか、未利用者に対しても施設への理解を高める取り組みが必要である。
・気候変動に伴う熱中症対策の徹底、あらゆる人が分け隔てなくスポーツを楽しめる安全・安心な
スポーツ環境の整備など、各施設のサービスの質を高める取り組みの強化が急務である。
〔外部有識者からの主な意見〕
・都民全体の満足度を65%にしようと考えた場合、未利用者の評価を高める工夫も重要なため、都立スポーツ施設の取り組みを丁寧に、わかりやすく伝える広報の充実も重要となる。
・気候変動の影響に伴う暑さ対策は、人命にかかわることから早急に対応する必要がある。
・デフリンピックの開催を契機とした、聴覚障がい者がいつでも自由にスポーツに親しむことのできる施設整備、用具の確保が重要となる。
〔今後の方向性〕
競技力向上や国際大会の開催、パラスポーツの振興、多目的利用の推進など、都立スポーツ施設の利用を促進するとともに、施設が果たす役割についても広く発信する。
暑さ対策の推進、東京2025デフリンピックの開催を契機とした情報保障設備の設置、子育て支援環境の整備等により、安全・安心なスポーツ環境を提供していく。
○グループ連携事業評価の実施例
▽東京都教育支援機構(アウトカム目標の新たな設定)
〔協働目標〕
教育課題の複雑化・高度化に伴い増加する教職員の負担を、専門的な支援により軽減
〔主な事業目標〕
・東京都国際交流コンシェルジュの運営
【目標】28年度
(1)マッチング件数1050件(2)交流活動の満足度86%(3)教員が負担軽減されたと感じる割合71%(4)継続希望率85%
〔現状・課題〕
・海外との交流活動のマッチング支援や相談対応等、きめ細かなサポートを行い、各学校のニーズに即した国際交流の実現に寄与しているが、国際交流の経験がない学校への拡大や、児童・生徒の成長(変容)を定量的に把握する手法の検討が必要である。
〔見直しのポイント〕
・国際交流実績のない都立高校30校を対象とした「アウトリーチ事業」を新たに開始するなど、都内公立学校への訪問を強化し、各学校の希望に沿った交流の提案を行う。
・事業実施後のアンケートに、交流後の児童・生徒の意識の変化や関心度の向上等の具体的効果を定量的に把握する設問を追加することで効果検証を実施し、更なる改善を図る。
