生後5カ月から1歳を迎えるまでの子どもを対象とする子育て経験者による定期訪問。訪問員の女性が初めて訪れてから8カ月で、「今日が最後ですね」と玄関先で母親に声をかけると、子どもが靴を履いて歩いて出迎えた。8カ月の成長を見守ってきただけに感慨もひとしおだ。
東久留米市が昨年12月から始めた「ファミリー・アテンダント」は、子どもが生まれたばかりの家庭に子育てを経験した訪問員を派遣し、日常の困りごとや悩みを聞き取るなどの取り組みだ。
同事業は、見守り訪問と伴走支援の二つが柱。見守り訪問では、5カ月を迎える月から1歳を迎える月までの幼児を養育する家庭に月1回、訪問員を派遣し、5~10分ほど会話を交わして子育ての状況を聞き取り、地域の支援情報などを提供する。訪問の翌週には、おむつや離乳食などの育児用品を無料で届けている。また、伴走支援では、見守り訪問を利用した保護者が、3歳の誕生日の前日までの期間、毎月1回、最大3時間まで家事育児の介助などが受けられる。
市はこれまで、妊娠を届け出た母親を対象に保健師・助産師が相談に乗るマタニティー面談や、生後4カ月までの子どものいる家庭が対象の新生児訪問、1歳の誕生日を迎えた子どもを抱える家庭に6万円分のポイント(育児パッケージ)をプレゼントする「バースデーサポート」などの施策を打ち出してきた。
しかし、生後5カ月~1歳までの期間は空白で、市はこれを埋めようと都子供政策連携室の補助を活用し、ファミリー・アテンダント事業を開始した。同事業はDM発送代行大手で、自治体の委託業務にも力を入れる(株)ディーエムエスに委託。市はアンケートや毎月の定例会などで事業者と連携し、各家庭に寄り添ったサービスを目指している。
都内では2023年度、大田、豊島、江戸川、日野の4区市がファミリー・アテンダント事業を試験的に導入。24年度から本格的な展開が始まり、世田谷区と東久留米市も続いた。今年度からは港区と葛飾区も事業を始めているが、見守り支援と伴走支援を同じ事業者が行っているのは東久留米市のみという。
「子育ての不安で最初は泣き出してしまう母親も、2回目の訪問では笑顔になって、自信がついて顔が明るくなる人もいる」と話すのは、支援員を務めて2年目になる女性。母親の精神的な成長を感じ取りながら、「自分だけで子どもの面倒を見ないといけない孤独で、不安になってしまう人もいる。そんな人の孤独に寄り添えれば」と取り組みの意義を話す。
見守り訪問の利用者からは「すごく気さくに明るく話しかけてくれる」「お母さんみたいな存在で、頼りにしている」「大人と話せるだけでありがたい」などの声が寄せられている。
市子ども家庭部のこども家庭センターは「見守り訪問と伴走支援を同一事業者に委託することで、子育て世帯の孤立防止に向けて、スピード感を持って連携している。今後も子育て支援の発展に寄与できるよう取り組んでいきたい」と話す。
都子供政策連携室企画調整部の吉田大輔企画調整担当課長は東久留米市のファミリー・アテンダント事業について、「家庭の実情に合わせて保護者に寄り添う先行事例として、他自治体も参考にしてほしい」とした上で、補助事業について「できるだけ多くの自治体に取り組んでほしい」と呼び掛ける。
都が目指す「チルドレンファースト」の社会の実現のためには、地域それぞれの子どもたちのニーズを的確にくみ取る基礎自治体の働きが欠かせない。各地域の実情に合わせた取り組みが問われる。=おわり
