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都立産業技術研究センター/新本部を臨海副都心に開設(全文掲載)

豊洲に向かう「ゆりかもめ」がテレコムセンター駅を過ぎて左にカーブすると、縦縞が印象的な建物が見えます。これが東京都立産業技術研究センター(以下「都産技研」)新本部です。この縦縞(ルーバー=細長い板を隙間をあけ平行に組んだもの)は、多摩産の杉材を使っています。都産技研新本部の目印となるでしょう。

 都産技研の役割は、中小企業の事業ニーズに即した高品質な技術支援を実施し、都内中小企業の振興を図り、これを通じて都民生活の向上に貢献することです。この役割は、今からちょうど90年前、1921年10月に東京府が設立した府立東京商工奨励館にさかのぼることができます。
 以来、東京市電気研究所(1924年設立)、府立染織試験場(1927年設立)、東京都立アイソトープ総合研究所(1959年設立)といった研究開発、技術支援のための組織ができました。これらは、より総合的なものづくり産業支援のため徐々に統合され、また柔軟でスピーディーな運営を行うよう2006年に地方独立行政法人化が行われ、現在の都産技研となっています。
 そして、2011年10月3日、都産技研は江東区青海に新本部を開設しました。近年の急速な技術革新や経済のグローバル化、東日本大震災からの復興など、東京の中小企業を取り巻く環境の変化は厳しく、新たな技術課題への迅速かつ効果的な支援が求められています。
 これに応える「ものづくり産業の総合的支援拠点」─都産技研新本部について紹介します。
より高度な/製品開発へ/高度分析開発センター
 「グローバル化への対応」「高度な製品開発を」という思いに具体的に応える施設、それが高度分析開発セクターです。製品の超小型化・高集積化に対応し、高機能な装置・設備を集中配置しました。素材や部品段階から高度な技術・製品開発を行い、高付加価値化や国際競争力強化を支援します。
 たとえば、核磁気共鳴装置の活用による機能性有機材料開発、画像測定器やレーザ干渉計など超小型化に対応した高精度の加工支援や、TOF―SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析装置)やESCA(X線光電子分析装置)など最新の技術動向に即した設備・機器を整備しました。
より総合的な/製品開発へ/システムデザインセンター
 ものづくりには、ユーザーのニーズにあった機能、安全性や信頼性、高寿命など製品自体の性能はもちろん、人間との親和性も求められます。この観点から2006年に「デザインセンター」を開設し、商品企画から設計・試作までを「デザイン」としてとらえた支援を行ってきました。システムデザインセクターでは、この「デザイン支援」に向け、さらに機能・設備を強化しました。
 その一つが、中小企業のための売れるものづくりの企画やマーケティング、販売促進を支援するセミナーや講座です。あわせて、設計・試作から評価までを総合的に支援する機器を拡充しました。3次元の形状測定を行う非接触デジタイザ、CADデータから短期間で立体モデルを作成し形状を確認できる3次元造形装置(RP装置)、CAEによる構造解析など、製品開発に直結する支援を総合的に行うことができます。
ワンストップ/サービスの提供/実証試験センター
 製品の安全性・信頼性を確保する支援は、実証試験セクターで行います。振動試験、衝撃試験、温湿度試験、動作試験、めっきや塗装の腐食劣化試験など、相談から試験、機器の利用まで、ワンストップサービスのために、ワンフロアに機器を集約しました。
 急激な温度変化・温度変化と振動を同時に与える試験機、人が立ち入れる大型恒温恒湿室など、全38機種を整備しました。これらの機器の利用について、専門技術職員が相談に応じ、企業の利用や問題解決をサポートします。
期待の新規/産業を育成/「環境・省エネ」など
 環境問題、省エネ問題、高齢化対応など先進国が抱える社会的な課題の解決は、中小企業がグローバルな競争を勝ち抜く戦略の一つとなります。都産技研では、これからの産業創出が期待される技術分野として、「環境・省エネルギー」「EMC・半導体」「メカトロニクス」「バイオ応用」の4分野に、集中した技術支援を行い、産業の育成を図ります。
 「環境・省エネルギー」分野では、有機LEDや低消費電力素子、太陽電池などを利用した製品開発支援を行います。「EMC・半導体」分野では、デバイス設計開発などオリジナルな競争力と高付加価値製品を創出します。「メカトロニクス」では、中小企業の製造機器にメカトロニクス技術を組み込み、高速・高精度・インテリジェント化することで、オンリーワン製品の製造を支援します。「バイオ応用」では、バイオセンサー、バイオチップ等の研究開発・実用化により、都民の安心・安全を支えるバイオ産業を支援します。
より高品質な/技術支援サービス/基盤技術支援の充実
 従来からの分野についても、装置・機器をさらに充実させ、より高品質な技術支援サービスを提供します。
 たとえば、高電圧試験。新しい高電圧試験装置は、交流高電圧発生装置や雷インパルス電圧発生装置をコンピューター制御することで、試験精度が向上しました。インパルス電流発生装置はIEC規格に対応し、公的機関唯一の設備として利用を待っています。
 照明試験では、従来は測定が困難だったLEDモジュールの測定ができる球形光束計の設置、新たな配光装置によるダウンライトやLEDスポットライトへの対応、光学台による小型LED照明の色彩測定・配光測定への対応など、LED照明に関する要望に応えるものとなっています。
 製品や試作品のX線非破壊検査も充実させました。複数の装置を導入し、数100##EAC8##メートルの分解能が必要な電子部品、数10センチの大きさのエンジンなど、多様な製品の高精細な非破壊検査を可能としました。ガラスの安全評価、残響室・無響室・結合残響室・半無響室の整備による高度な音響分析、高速通信回路に対応した適正試験など、数多くの新設備が整えられ、中小企業の製品開発を支えていきます。これら新設備の整備と同時に、開発支援、試験、セミナーにオーダーメード型のメニューを充実させ、企業の要望に応じた支援事業を展開します。
中小企業に/製品開発の場を/製品開発支援ラボ
 製品開発環境がない企業のために、製品開発支援ラボがあります。旧西が丘本部では3室だった製品開発支援ラボを18室に拡大し、24時間利用としました。機械、電気、IT、化学に適合したラボ室を整え、入居者が共用で使える加工室や化学系実験室も整えました。入居者の問い合わせや相談に対応するラボマネージャーも配置し、サービス面も大きく向上しました。都産技の各種事業の利用と相まって、製品開発のスピードアップが期待できます。
より連携の/輪を広げる/東京イノベーションハブ
 中小企業がより大きなビジネスチャンスを得るには、相互の情報交換・交流が大きな役割を果たします。その場として設置されたのが東京イノベーションハブです。大学・学会・研究機関とのマッチングイベントや企業団体の交流など、さまざまな企画に利用できます。
 都産技研は、90年の歴史を受け継ぐ技術支援のDNAを伝え続けています。その一つの進化形が新本部です。ものづくり産業の総合的支援拠点たる都産技研新本部は、中小企業とともに新たなものづくり産業の発展の道を歩み続けるのです。

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