■■ 書 評 ■■

タイトル



公務員もMBA 転職編・現職編 


 本紙好評連載の「ラーメン売るのもMBA」に、もうひとつのストーリーが加わって、自治体職員に好適なMBA入門書が仕上がった。

 先行きに見切りをつけた都庁中堅幹部が、腕に覚えのラーメン作りの技を頼りに、思い切って転職。しかし、周到だったはずのリサーチと自慢の腕が通用したのは開店日のみ、赤字と焦りがじわじわと広がっていく。そこで出会ったのが元同級生でMBAの経営コンサルタント。だがこれが白馬の騎士とはいかない。調査、仮説、実施→調査、仮説、実施と、その繰り返しのつど織り込まれていくMBAの手法と解説。試行錯誤の果てに、客は徐々に増え、定着していく。ところが店の姿は、当初描いていた夢とは全く違ったものになっていた。この予想外の展開がいかにもMBAなのだ。

 単行本で加わったもうひとつのストーリーは、都庁にもMBAが導入されるという衝撃のニュースから始まる。ただちに反応したのは労働組合。現場でのささいなやりとりが過剰報道に肥大したものと一件落着したが、この騒ぎに都知事が反応。MBA導入を検討する特別チームを編成せよということになったのだ。このドタバタ劇における情報管理や意思決定、そこから進んだ導入に向けてのリサーチ。自治体運営における危機の先取り。効率性とサービスの追求。民間とは異なる課題と、民間ではできない手法の析出。その随所にも、MBAの手法が織り込まれていく。

 ラーメン屋も特別チームも、必ずぶつかるのは「もともと、そんなもの必要とされていない!」という固定観念の壁である。だが真のニーズも、真の危機も、その壁のすぐ背後に、予測とは異なったかたちで存在している。MBAはそれに迫り、浮き彫りにすることができる。

 東京特別区職員でもある著者の、実務をふまえた記述には、ちまたにあふれる経営コンサルタント本にはない、リアリティーと具体性と説得力がある。(O)
                    
『都政新報』6月8日付

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