教育の現場

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3月15日付(4822号)   「教育の現場」INDEX
●不耕起農法で米づくり
 稲と共に生徒も自立 次の収穫へ種まきを

町田市立大蔵小学校


 「疲れる。腰がいたくなる。でも楽しい」と、五年生の佐田勇悟君。「学校は大勢だけど、農家は少ない人数でやらなくてはいけない。すごく大変だと思う」と言いながら、将来は自分も農業をやりたいと。それも「どこも農薬を使っているけど、不耕起ならメダカも一杯来るし、おいしいお米ができるので、広めていきたい」と、種を並べる手を休めず話してくれる。(写真=男子と女子がペアになってわずかに発芽している種をきれいにまいていく)

種まき 町田市立大蔵小学校では今年度、五年生全員で不耕起農法による「米作り大作戦」を展開中。秋の収穫を終え、次の「米作り大作戦U」がスタートし、十二日は、昨年体験できなかった作戦3「種まきをしよう」の決行日だったのだ。

 オリエンテーションを受け、三クラス百二十人の生徒は一斉に裏庭に。二人一組になって、床土の量を計ると、苗箱に平らに敷き詰め、種を均等にまき、水をかけ、土をかぶせ、ビニールハウスへ。

 「見て下さい。誰も遊んでる子いないでしょう」と菅原聡先生。最初は「くさい、汚い、嫌だ、疲れると言って、こんなに生き生きしていなかった」と笑い、この一年ですっかり逞しくなったのだという。

 「子どもたちが自信を持った。最初はやらされていたのが、自分で米を収穫し、クロメダカも大量に増えたのを見て、今年もうまい米を作るぞと、自分の意思になっているんです」

 総合的な学習として取り組んだわけではなく、「指示待ちが目立ち、五年の最初の算数で応用問題が解けなかったんです。何とか問題や課題を見付け、自分の力で切り開いていく力をつけ、自立を促したいと、担任三人で話し合い、田んぼなんかどうだろうと出てきたものなんです」

 それからが大変だった。近くの農家から田んぼを借りられたのが四月十九日のことで、苗の調達に一苦労。一枚と思っていたのに四枚、二十アールも貸してもらえ、作業は厳しくなったが、地域や保護者が大きな力になったという。

 学校のある大蔵町は名前通りの穀倉地。その貴重な土地を提供してもらい、二十二年前に開校しただけに「おらが学校という思いは強い」と千葉正美教頭。

 宮内宏三校長も「総合的な学習というなら、昔の方がやっていた」と。以前はお茶も栽培し、校庭に町田市特有の植物を集めて自然植物園を造った教師もいた。四代目の北村文治校長は、掘り抜き井戸と池を掘り、ホタルが飛びかうビオトープの先駆けといえる「大蔵の里」を造り、縄文時代の赤米も栽培して、生徒に自然を体験させた。

 それらは今も地域で大事に守っている。「温かい土地柄なんです。何かにつけ地域の方が手を貸して下さる。今回も皆さんが手助けに来てくれ、もうボランティアを超えていますよ」と校長。教頭も「いろいろな人の協力があって出来ることなんだと学んだ意味は大きいと思います」と。

 この日も、初代PTA会長で町内会長を務める中溝實さんが顔を見せ、昨年度のPTA会長の古宮次郎さんも、種まきを終えた頃、ビニールハウスに使うビニールを持って現れた。開かれた学校がまさに実践されている格好だ。

 自然を大事にする学校ならではの不耕起栽培だが、「どこの小中高校もやっていないと思う」と菅原先生は胸を張る。と言っても、岩手の実家で実践しているが、当人は初めての経験。「教師も教わりながら進めていったんです」と笑う。

 固い地面に稲の苗を植えると、稲は生き延びるため一生懸命に根を張ろうとする。そして、その丈夫な根から太い茎が生まれ、根が耕す格好になって、土も柔らかくなっていくという。健康な稲は農薬も必要としないし、田の水には大量の酸素も含まれる。稲や藁が水中で分解すると、大量の藻が発生し、ミジンコが生まれ、これを食べてメダカが繁殖。食物連鎖でドジョウ、タニシ、トンボ、水鳥も集まり、生き物が豊かに暮らせる環境になるのだ。

 この不耕起農法。絶滅寸前のトキが野生に帰った時に生きていける環境をと、佐渡の農家が取り組み、琵琶湖復活プロジェクトでも取り組まれている。

 子どもたちにも、生き物が共生できるという環境面でのインパクトが強かったようだ。「自然に良いことは、人間にも良いことだと思う」と話す生徒。夏休みには色々な生き物が見えるので、一回は田んぼに行くようにと先生に言われて、「僕なんか二十五回も行っちゃった」と言う生徒。

 メダカは田んぼがどれだけ自然を保っているかのバロメーターだと、絶滅寸前のクロメダカ二百匹を放流し、五千匹にまで増えた。水を抜くと全滅してしまうと、学級委員会で「メダカ救出作戦」を話し合い、水を張ったままでの稲刈りという事態にもなった。

 稲刈りのカマも買う予算がないので、皆で手作り作品や漫画などを持ち寄ってバザーを開こうと話し合って、捻出したという。

 「ただ米づくりだけではなかった。通知表では測れない、すごい力がついています」と三人の担任。そして、子どもたちは「また、おいしいお米ができるのが楽しみ」と口々に。五百キロの収穫があり一人に三キロが配られたが、今度は五キロ、いや十キロが目標だ。
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