教育の現場

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5月25日付(4744号)   「教育の現場」INDEX
●3年で卒業も可能 常時300人が在籍
 学校らしい学校で学ぶ喜び

都立立川高等学校定時制


 「ごくオーソドックスな学校らしい学校に自然に生徒が通えてる。これが非常に大きいことではないか」どの学校も特色を打ち出すことに懸命な中で、ごく普通であることが大事だと言う井上隆教頭。

立川高校定時制 それでも「都内の定時制として一番最後まで残っていく中核になる存在だと思う。本校がなくなる時は都立がなくなる時。そういう気概を先生方は持っているんです」と話す。

 少子化や社会の変化もあって、定時制は減る傾向にあるが、ここ立川高校には三百人位の生徒が常時在籍している。それも、訪れた人は一様に驚くというが、どのクラスも三十人ほどの生徒が熱心に授業を受けているのだ。「定時制ではないみたいですね」と驚かれるというのも頷ける。

 「この学校に入ったことを喜んで、生き返れたという思いでいる子が一杯いるんです。校友会の活動はすべて生徒たちで計画し、我々はサポートするだけですが、中学では決して目立つ存在ではなかったと思うのに、一人ひとりの生徒が不思議と頼もしくなっていくんです」

 問題のない生徒が集まってきているわけでは決してない。東京府立第二中学校夜間中学として開設以来、六十五年の歴史があり、「本当に力もあり、昼間何するものぞ、定時制ここにあり、という血気盛んな人たちが大勢いました」という時代から大きく変化し、今は非常に複雑な多様な人たちの受け皿になっているのだという。

 欠席が多いと内申点で不利になる入試制度のもとでは、不登校の経験者も定時制が受け皿に。心のケアを丁寧にしていかないといけない子供も多いという。
 親からの相談の電話に、まず学校に来てくれと言う井上教頭。年に百件ほどの面談をこなし、カウンセラー教頭の異名をとる。「出来たら子供も連れてきて欲しいと話すが、一緒に来たらまず成功です。苦しんで家から一歩も出られなかったような子供もいるが、校内の様子を必ず自分の目で見てもらうんです」

 学校の財産は「人」という教頭。「入学すれば先輩になるので、その顔が生き生きとしていたら、ホッと安心しますよね。学校全体に何か包んでくれるような温かいものがあるんです。自分なりの進路をつかんで巣立ってくれるが、その原因が何かと言われても、人を大事にする雰囲気があるとしか言えないですね」

 進学校だろうが、大変と言われる学校であろうと、昼間でも夜間でも、人間的なものを育てていこうという思いでは、目の前の子供たちは同じだと熱く語る。

 「中学の先生にとっても親にとっても、定時制は進路として見られていないのを感じる。定時制も勉強するんだと驚くから、当然じゃないかと言うんです。学ぶ喜びを知って欲しいし、学校に行ったら学びたいという欲求が絶対にあるはずなんです。基本的に勉強に関しては譲っていない。人間としての誇り、プライドがあるのだから、きちんと高校生にふさわしいものを教えていく。その点ではプロフェッショナルな先生方が揃っているんです」

 特色がないといっても、これまで培ってきた創意工夫は数知れない。通常、定時制は卒業まで四年かかるが、都立新宿山吹高校の通信制と併修、大学入学資格検定制度の活用といった方法で、三年で卒業することも可能にしたのだ。

 さらに、一週間の授業時間を二十一時間とした。普通は二十時間で、一科目も落とすことができないが、単位に余裕が生まれ、一科目が足りないだけで下の学年に編入しなくてはいけないといった事態も改善されるなど、画期的なもの。

 「先生方の負担も大変だが、幅の広いカリキュラムを組むようにしています。約百校ある定時制でも二十一時間にしているのは本校だけです。紆余曲折の上、チャレンジしてきた生徒たちに、より魅力ある可能性あるものを整備したいという思いからなんです」

 一年生は百四人でスタートした。それでも色々な事情で、卒業までには三分の二が学校生活を断念せざるを得ない状況だ。編入もあって、例年七十人位は卒業するが、就職は厳しい。

 「今は大学の先生が生徒を是非にと学校に来る時代で、進学が一番楽かもしれない。でも、家庭の事情などで生活が厳しい生徒が多く、そういう中で良く頑張っていると思います」

 親の収入で入学する大学のランクが決まると言われる社会にあって、定時制は人々の意識に入っていないと。「一列に学校を並べて評価しているのは大人の側の責任。そうしたものを打破し、多様な中で育っていって欲しいですね」

 それでも、ここでは普通の高校を卒業したんだという思いが、将来の自信につながっているのだと話す。「どこに行こうかと悩んでいる人には、とにかく立川高校定時制に来てみてくれと言うんです」

 ちょうど給食の時間。食堂は誰が先生で生徒か分からない。定時制だけに、中には高齢の方もいる。「担任以上にクラスを仕切ってくれている」と教頭は笑うが、その人たちも「何かあったら話を聞いてあげて、若い人が学校に来やすいようにしてあげるのも我々の務めかなと思っているんです」と話してくれた。こんな触れ合いも温かい学校の一因なのかもしれない。
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