教育の現場

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1月30日付(4714号)   「教育の現場」INDEX
●命とともに学ぶ 都内唯一の畜産科学科
 温かい雰囲気が生徒伸ばす

都立瑞穂農芸高等学校


 日曜も夏休みも冬休みでも、学校に来ない日は数えるほどという生徒もいる、ここ瑞穂農芸高校畜産科学科。狭山丘陵の丘の上まで、片道二時間以上かけて来る生徒さえいる。皆、自分が担当する動物が気になって仕方がないのだ。

豚のお産 東京都には島を除くと六校の農業高校があるが、畜産を学べるのはここだけとあって、都全域から生徒が集まってくる。十万平方メートル近い広大なキャンパスには畜産科学科のほか、園芸科学科、食品科、家政科それぞれの棟があり、放牧場や豚舎、温室、畑が広がる。

 放課後の当番実習では、受け持ちの動植物の世話を一年から三年生までが一緒に行う。七百キロを超す乳牛の乳絞りをする生徒たち。世話は大変ではないかと思ったが、「すごく楽しいです」と明るい笑顔が返って来た。何より牛の毛並みが思わず触ってみたくなるほど。「きれいでしょう。生徒が一生懸命世話しますからね」と小暮通夫校長。どの牛も品評会で受賞しているとかで、壁には乳牛共進会優勝の賞状が並ぶ。

 「牛が乳房炎になったりするので、生徒に搾乳をさせない学校もあるが、うちは全部やらせている。毛立ても全部やらせているんです」。大型トラクターも皆が操る。牛の乳は量がまとまった段階で業者に売却するほか、食品科で乳製品の製造実習に使われ、糞尿もすべて堆肥になるのだ。

 豚舎では、十二頭の子豚が産まれたばかり。母豚の傍らに女生徒が寄り添っていて、そこに子豚たちがまとわりついていた(写真上)

 その一方、雄や乳を出さなくなった牛などは業者に引き取られ、生徒は泣きながら見送るという。当然、死にも直面する。

 そうした体験が生徒を変えるという。「すごいですよ」と花野耕一教頭。必ずしも皆が目的意識を持って入学してくるわけではないが、「入ってから変わります。温かい雰囲気がある学校なんです。だから生徒が伸びるんだと思う」

 「十七歳は怖いと言われるが、動物や植物に毎日接していると、優しい気持ちになりますね」と校長も。

 畜産科学科に牛や豚や鶏は当たり前だが、ここにはコモンマーモセットなど珍しいサルやタヌキ、ワラビーなど約四十種類もの動物がいて、ちょっとした動物園。実際、イヌやウサギ、ハムスターなどは保育園や小学校に出張する移動動物園の主役だ。ポニーの乗馬体験も、親子ふれあい動物教室で大人気という。

 「生徒が飼いたいというのでどんどん増えてしまったが、最近、動物のいやし効果が言われ、その先駆けになっていると思う」

 農業高校は様々な機能を持つ上に、こうしたセラピー面や環境保全にも寄与できる。「これらを生かしていかないと罰が当たる」と校長。生涯学習のセンターとして、都民にも大いに利用してもらいたいのだと。

 ところで、瑞穂町に高校はここだけ。一九四九年に農林高校定時制課程瑞穂分校として開校。六五年に瑞穂農芸高校として独立したが、ほかに高校がないため、ここの定時制は農業科と普通科の併合科が特徴だ。

 普通科でも農業に関する授業を行い、もちろん都内唯一の畜産の授業もある。ここの生徒が「東京都高等学校定時制・通信制生徒生活体験発表会」に毎年参加し、一昨年と昨年度には全国大会出場も果たしたという。そして昨年度は文部省初中局長賞を受賞した。

 長年指導に当たってきたのが国語の角田瑞乃先生。「辛い経験を持っている生徒も少なくないが、その経験をステップに、活力源にして欲しいんです。人前で自分の意見を言うことは、これまでの生き方のまとめになるし、今後の大きな成長につながると思う」

 給食で初めて温かいご飯を皆で食べる経験をしたという生徒もいるといい、 「姿格好に驚く人もいますが、とても明るくやさしい面を持っていますしね」と大島敏秋教頭も話す。

 ほかにない体験ができる併合科で、教職員も忙しさに追われる日々だが、ここの定時制のよさがあまり知られていないのは残念と。もっと多くの人に知ってもらいたいのだという。

 全日制でも、大学や短大に進学する生徒が増えているし、バイオなど新技術の学習を積極的に取り入れていることなどを知って欲しいと。今年度から校長自らイラストも描き、『みずほ青陵の風』という学校だよりを作成、約百校の中学校に郵送している。すでに四号を発行し、瑞穂農芸の多様な顔をPR。問い合わせが一挙に増えたという。

 「これだけの財産をもっと活用したい」と花野教頭。こういう時代だからこそ、農業の持つ可能性を訴え、東京の中で根を張って活躍できるようにしたいとも。小暮校長も「広く情報を発信し、生徒や地域の皆さんが夢を広げるお手伝いをしたい」と話し、ほかの学科も紹介したかったが、時間が足りなかった、といかにも残念そうだった。
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