都政新報
 
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【2009都議選】東京蘇生―09都議選 開戦前夜


  

党派の色彩 さらに強く/鉄壁の70議席
大敗から復調した自民/今回も少数激戦の様相に


 今年は、衆議院選挙と都議選という二大政治決戦を経て、各党が一斉に次期都知事選に向けて動き出す年である。1979年の鈴木都政誕生以来、都議会は自公中軸で回ってきたが、この体制が今後も継続されるのか。それとも国政での勢いに乗って民主党が比較第一党になり、地殻変動が起きるのか。首都東京の権力をめぐる攻防は本格的に始動し、今年夏の都議選は単なる「中間選挙」という以上に大きな意味を持つ。開戦前夜ですでに地上戦は始まっているのである。


 都議選は、よく「国政の先行指標」「リトマス試験紙」と言われる。その言葉どおり、国政の動きがそのまま都政の場に持ち込まれてきた。

 たとえば、社会党(現社民党)が地すべり的な勝利を収めた1989年は「反消費税」の都民の怒りが都議選に向かい、女性候補を多数擁立した戦術も功を奏して社会党が36議席を獲得。そのあおりを受けて、自民党は56議席から43議席に後退する憂き目を見た。43議席というのは、1965年、都議会議長選に絡む「黒い霧」解散で、38議席になって以来の大敗北である。
 
 93年は、新党ブームで都議会初進出の日本新党が56万票で20議席を獲得。自民党は復調することができず、44議席にとどまった。97年は、シルバーパス廃止反対などを訴えた共産党が26議席で第二党に躍進。この時、自民党も54議席に党勢を回復した。
 
 01年は、今まで得票率31%程度が実力の自民党が「小泉人気」に支えられ、得票率36%で引き続き勝利。公認候補55人のうち、53人が当選するという高い確率で他党を圧倒した。そして05年は、二大政党制化が進む中で、都政においても民主党が107万票、35議席に躍進したのが特徴だった。

■転換点の97年
 各党の選対関係者は、こうした政治に敏感な有権者意識から衆議院選挙がいつになるのか、この点に強い関心を寄せている。都議選前か、都議選後か、同日選か。それによって都議選の様相が変わるからだ。しかし、衆議院選挙の時期がいつになろうと、二つのことは言える。

 一つは、民主党は「都議会で自公を過半数割れに追い込む」としているが、与党体制は鈴木都政以来、一度も70議席を下回ったことがないという事実である。もう一つは、風に左右されることなく、都議会でイニシアチブを握り続けるため、自民党は97年から選挙方針を転換しているという点である。

 まず与党体制について言えば、89年、93年当時は、自民、公明、民社の枠組みだったことから、3党で74議席、71議席だった。民社党の解党後も、自公で71議席以上をキープしている。

 97年の都議選は、共産党躍進に注目が集まって見落とされがちだが、自民党が54議席に復調した点を見逃してはならない。これは公認候補の絞り込みが勝因である。たとえば89年は71人、93年は73人といった具合で、1965年以降、毎回、70人前後の公認候補を立ててきた。これに対し97年は59人、01年が55人、05年は57人と候補者数を抑えている。

 候補者を大量に擁立すれば、それだけ票が分散し、「マドンナ・反消費税」「新党ブーム」など国政の風が吹くと、競り負けて議席を落とすリスクも大きくなる。こうした教訓から、公認候補を厳選するようになった。その結果、40台前半まで議席を落とすような大敗の危険性はなくなり、安定的に40台後半から50台前半の議席確保が可能になった。09年の都議選でも、この路線は変わっていない。

 ただ、現在のように麻生内閣の支持率が極めて低い状況では、候補者数を絞り込んでも、なお追いつかないかもしれないという不安材料を突きつけられた選挙情勢になっている。

 また、与党の公明党は93年以来、4回とも全員当選を続けている。

 自公の過半数割れという民主党の選挙目標は、鉄壁の70議席、自民党のしたたかな選挙戦略への挑戦という二つの側面を持っているのである。

 前回の立候補者数は220人で、都議選史上、最少だった。内訳は、政党公認候補が190人、無所属は30人だった。89年から01年までは、いずれも250人前後の立候補者がいたことから、前回は近年にない少数激戦になった。

 今回は、1月5日までの政党公認候補者数が、諸派1を入れて合計148人(内定1含む)。いくつかの選挙区でまだ主要政党の公認候補が決まっておらず、各党選対関係者の話を総合すると、あと30人から40人程度の追加公認がある見通し。従って政党公認候補者数は、前回以下か、同程度になる公算が高い。無所属候補がどのくらい出るかにもよるが、今年も相当な少数激戦になる雲行きだ。

 党派別に見ていくと、自民党はすでに52人の擁立を決定。地元調整が難航している豊島、北多摩第二のほか、杉並、板橋、昭島、小金井、西多摩で、さらに計7人の候補者を出す予定。前回の57人を上回る可能性が高い。板橋と小金井では、候補者選考で公募方式を採用している。

 北区は定数4のため、2人擁立してもいい選挙区だが、衆議院東京12区で公明党代表の太田昭宏代議士を抱え、自公連立政権のシンボル選挙区となっている。このため都議選では、公認候補は1人でいく考えだ。

 民主党は、公認が内定している名取憲彦氏を含めると、これまで44人の擁立を決めた。定数8の世田谷、定数6の練馬、定数4の新宿、江東、中野、葛飾、定数2の渋谷、荒川、三鷹、西多摩、北多摩第二の計11選挙区で、もう1人の追加公認を検討している。また、自民党の牙城である1人区の千代田、中央、青梅、島しょの4選挙区で候補者を立てれば、前回の51人を上回る59人程度になる計算だ。

 公明党は、前回と同数の23人を公認。「常在戦場」で取りこぼしなく、すべて勝つ方針だ。目黒、荒川、町田は、これまで最重点選挙区と位置づけてきた。

 共産党は、23人の公認を決定。42全選挙区に擁立する方針を修正し、1人区と2人区の場合、可能なところは立てる考えにした。前回の43人より少ない候補者数になる見込み。今後、仮に2人区以上にすべて候補者を立てたら、最終的に計37人になる。

 生活者ネットワークは5人を公認し、現在、杉並で擁立に向けて調整している。友党である民主党とは昭島で選挙協力が実現したが、定数2の南多摩、北多摩第二では、民主党が独自候補を立てるため、現有議席の死守で懸命になっている。

 このほか、都議会の1人会派の行革110番、自治市民93、市民の党、民主フォーラムの4人も立候補する考えだ。

 全体として09年の都議選は、自民党と民主党がほぼ同数に近い候補者を立てて激突する中で、党派選挙の色彩がより一層強くなり、小政党や無所属にとって厳しい戦いになりそうだ。 (このシリーズは全10回です)


 

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