都政新報
 
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検証・極秘会議 豊洲新市場土壌汚染(下)


▲技術会議の座長を務めた首都大・原島文雄氏
  


新技術/評価低かった原位置浄化 5つの案


gokuhi■第3回(10月7日)

 民間からの公募で多かった技術が、汚染土壌の原位置浄化だった。土壌を掘削除去しないで、その場で微生物処理や化学処理などを行うのが一般的だ。だが、技術会議では当初から原位置処理に対する評価が低かった。 委員 AP+2~4メートルはすべて掘削処理を行うが、原位置処理で処理基準以下になれば、そのまま置いておいてもよいのか。
 都側 土壌を掘削するほうが対策効果を確実に把握できるため、汚染土壌処理については、掘削処理が望ましい。
 委員 それなら、原位置処理の評価は低くなる。原位置処理に関する提案も多いが、よい技術であっても選定外になる。
 都側 そのように考えている。
 委員 汚染土壌処理での原位置処理は、掘削処理のための前処理の位置づけしかできないと考えてよいか。
 都側 その通りである。
 委員 原位置処理は、最初から考慮しなくてよいのか。
 都側 原位置処理では、ボーリング調査による確認が必要であり、対策効果という点では、掘削処理のほうが説得力があると考えている。
 専門家会議の提言では、AP+2メートル(東京ガス工場創業時の旧地盤面)からAP+4メートルまでの土壌を入れ替えることになっている。ところが、公募してみると、汚染がベンゼンやシアンが中心なので、物理化学的処理やバイオ処理を行い、AP+2メートル以下は掘削の必要はないという提案が目立った。
 しかし、都側は、「基準値を超える土壌を残置しがたい本件においては、原位置浄化はリスクが高い工法」と評価し、あくまで掘削処理を行うことにこだわった。



■第6回(11月5日)
 この会議では、民間からの公募結果をもとに、委員から推奨された新技術・新工法が一覧として示された。都側はこれらを組み合わせ、汚染物処理、液状化対策などを含む一貫した対策として五つの案を提示した。
 このうち案1、2、3は、汚染土壌を掘削処理する工法は共通で、各案によって汚染物質の処理方法が異なる。案4は、東京ガス工場創業時の旧地盤面から2メートル以下の土壌を原位置で微生物処理する案。案5は、建物建設地で掘削した土壌を処理後に埋め戻さず、地下空間を利用する案。
 これらの5案は、前処理として、ベンゼン、シアン化合物の濃度を下げるため、原位置による微生物処理を行うことが前提となっていた。高濃度の汚染物質をあらかじめ前処理することで、濃度を下げて、経費を安くするのが狙いだ。
 都側 濃度に応じて処理単価が変わるので、事前の微生物処理により濃度を下げることで、処理費用がトータルとして下がるのではないかと考えている。
 委員 微生物処理による前処理については、概算費用を算出していただき、できるだけ前向きの方向で議論する。



事務局案
 ■第9回(12月25日)
 この日、都側から五つの案をもとに、土壌汚染対策の全体計画の説明があった。
 委員 評価が高かった案1~5のうち、案4については、原位置微生物処理のため確実性に問題があり、案5については、土地の利用、機能、価値の問題が経費に対して十分にプレイバックされないので、事務局としては、これらを除いた案1、2、3をまとめて、それぞれの良い部分を組み合わせて案とつくるということでよいか。
 都側 その通りである。
 委員 案4の原位置微生物処理は、期間が長ければ問題ないが、期間の制約や浄化の確認の問題があるので、豊洲での適用は難しい。
 委員 案1、2、3は、これしかないという特殊な工法ではないと思うので、今後の入札も考え、事務局案の通りまとめれば良いのではないか。
 こうして、原位置での微生物処理を前処理の段階で採用し、案1、2、3の良い部分を組み合わせた全体計画がまとまった。
 12回にわたる技術会議の会議録を振り返ると、スケジュールや経済性、実績、専門家会議の提言など、前提となる条件を都側が示し、それらに合った新技術・工法を組み合わせて、全体のシステムを構築していった過程がうかがえる。
 一方で、技術的な評価が高い原位置浄化のように、技術の良し悪し以前に、それらの前提条件に合わないという理由で選定から外された技術も多かったようだ。技術会議は、今回の土壌汚染対策を、最適な技術の組み合わせとして立案しており、個々の技術に目新しいものはない。その点を踏まえないと、石原知事の口癖でもある「世界に誇る最先端技術」という言葉が空虚に聞こえる。 (おわり)


 

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