都政新報
 
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【職員】人事院勧告 2年連続で月例給・特別給引き下げ

 
  55歳超管理職層中心に一定率減額

年間給与で9万4千円減


 人事院は10日、月例給を0・19%、特別給を0・2月分引き下げるよう国会と内閣に勧告した。月例給及び特別給の引き下げ勧告は2年連続となる。月例給の公民較差の解消にあたっては、50歳台後半層の職員で一定率を減額(△1・5%)する措置を初めて導入。併せて40歳台以上の中高齢層で引き下げ改定を行う。一方で30歳台までは据え置く。期末・勤勉手当については0・2月分を引き下げる。この結果、平均年間給与は9万4千円(1・5%)の減収となる。また、給与等に関する報告では、高齢期雇用の基本的な方向を示した。今年中を目途に立法措置のための意見具申を行う。公務員人事管理では、労働基本権問題の議論に向けた論点を整理したほか、非常勤職員制度の改善にも言及している。

■月例給

 今年の職種別民間給与実態調査は、約1万1100事業所の約45万人の個人別給与について実施(完了率89・7%)し、その結果、月例給では公務員給与が民間給与を757円、率にして0・19%上回っていることが明らかとなった。
 月例給でのマイナス較差の解消にあたっては、民間との間で特に給与差が大きい50歳台後半層の給与水準是正を図ることを中心に対応した。
 具体的には、55歳を超える職員について、地方機関課長にあたる行(一)6級以上の俸給と俸給の特別調整額(管理職手当)を1・5%減じて支給する措置を講じた。
 減額措置による解消分を除いた残りの公民較差については、40歳台以上の中高齢層職員で俸給表の引き下げ改定(平均改定率△0・1%)を行う。その一方で、民間の給与水準を下回っている30歳台までは据え置くこととした。
 今回の一定率減額による給与抑制措置は、50歳台後半層の職員での公民給与差の拡大傾向を踏まえて導入される。
 人事院によると、定数削減や社会保険庁の廃止等で、行(一)適用者が昨年から約1万3千人減少する中、在職期間の長期化で高齢層での退職者が減り、補充としての若手職員の採用も増えず、平均年齢の上昇と平均給与月額の増加を招いている。50歳台後半層の職員では、給与水準の高い6級以上の在職率も高まっているという。
 さらに、民間では50歳台後半層の平均給与額が他企業への出向や転籍等も背景に50歳台前半層よりも低くなっており、公務との給与差を拡大させる要因となっていた。
 このほか、給与改定では、指定職俸給表で公民較差と同程度となる0・2%の引き下げ改定を実施。医(一)は、一昨年に特別改善を図り、昨年も引き下げの適用除外とされたが、今年も処遇確保等の観点から除外されている。

■特別給

 特別給に関しては、民間の支給実績が、今年2月から7月までの上半期がわずかに増加したものの、昨年8月から今年1月までの下半期が前年比で大幅に減少したことから、年間の支給割合は3・97月となり、公務の4・15月を下回った。
 このため期末・勤勉手当は、民間との均衡を図るため、支給月数を0・2月分引き下げ、3・95月とする。今年度は12月期の期末手当で0・15月、勤勉手当で0・05月を差し引く。
 勧告通りに実施された場合、行(一)の平均給与は月額で39万4909円(平均41・9歳)、年間給与では9万4千円減(△1・5%)の633万9千円となる。また、一定率減額の措置を講じた50歳台後半層では、地方機関課長(56歳、扶養親族は配偶者)で、勧告前後の比較で年間給与額は21万6千円の減額となる。

■定年延長

 人事院では、給与等に関する報告の中で、公務員の高齢期の雇用問題について、定年延長に向けた制度見直しの骨格も提起した。
 この中では、公的年金の支給開始年齢引き上げに合わせて、13年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げるほか、高齢期の働き方に関する意向聴取の仕組みや一定範囲の管理職を対象とした役職定年制の導入等を打ち出している。
 定年延長に伴う給与制度の見直しでは、再雇用等の継続雇用制度が中心の民間企業で、60歳台前半の給与水準が60歳前に比べて3割程度低くなっている実状等があるため、公務についても職務給を基本に60歳台前半の給与水準を相当程度引き下げて制度設計する考えが示されている。
 また、今回、50歳台後半層の給与について一定率減額措置を講じているが、50歳台では改定後も公務員給与が民間給与を上回っている状況にあるとし、定年延長も念頭に50歳台の給与のあり方について必要な見直しを検討するとした。
 公務員の人事管理に関する報告では、国家公務員制度改革基本法に基づき、労働基本権制約の見直し議論が本格化することが予想されるため、議論の素材となる論点等をまとめた。
 自律的労使関係制度のあり方では、基本権制約の程度等に応じて、4つのパターンを提示。さらに「国会の関与(法律・予算)と当事者能力の確保」「団体交渉権、争議権を付与する職員の範囲」「労使交渉事項や協約事項の範囲」など6つの論点を掲げている。
 このほか、社会的に課題となっている非常勤職員を巡っては、日々雇用の非常勤職員の任用・雇用形態を見直し、期間業務職員制度を設け、今年10月から実施する。報告では、育児休業等をすることができるよう育児休業法改正の意見の申出を行っている。

■都への影響

 都人事委員会勧告に向けて最大のポイントとなるのは、初めて導入した一定率の減額措置への対応だ。
 そもそも国は、これまで早期勧奨退職を前提としてきたため、定年退職まで働く職員の比率は、国に比べて都が高いなど、職員構成が異なる状況がある。
 さらに都では、05年から段階的に職責・能力・業績をより一層反映した給与構造・制度の実現に向けた取り組みを進めており、若年層に加え、管理職層の引き下げを緩和するなど「昇給カーブのフラット化や職責を反映したメリハリある給与構造」としてきている。
 今回の人事院勧告では、55歳を超える管理職相当の職員だけ一定率で給料を引き下げるとの措置が打ち出されたが、こうした経緯がある中、都人事委員会がどのような方向を示すか注目される。
 また、特別給についても、都では、昨年の勧告で業績の反映度合いを強めることを目的に、勤勉手当の割合を引き上げている。国は0・2月分の引き下げを期末手当と勤勉手当に振り分けたが、全国的に依然として低い勤勉手当比率とされる都の対応も焦点となりそうだ。
 高齢期の雇用問題では、国が基本的な方向として掲げる定年延長を都に導入するとした場合、いくつかの影響が考えられる。
 今回の勧告では、現行の再任用制度について、定年の段階的引き上げ期間中の雇用確保措置として存置することが示されているが、都では国と比べて、多数の再任用職員がおり、定年延長と再任用制度が並存する中、整合性のある任用給与制度を構築することが課題となる。
 また国が言及した役職定年制についても、職級や人員の構成が異なり、例えば国の例にならって本庁課長級以上に役職定年制を導入するかなど、多面的な検討が必要となりそうだ。
 このほか、非常勤職員の育児休業に関しては、国が新たに設ける期間業務職員制度では、引き続き任用された期間が1年以上の職員を対象とするが、都の非常勤職員の雇用期間は1年以内であるなど、国との間で制度の違いもあり、対応に注目が集まる。
 

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