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小池都政1年/【第2部】都職員アンケート(3)/市場基本方針/決め方や実現性 職員から疑問符

 
  

 本紙が行った都職員アンケートでは、小池知事が中央卸売市場を豊洲に移転させた上で、築地市場の跡地を再開発する基本方針を「評価する」「評価しない」の二択で回答してもらったところ、「評価しない」が全体の87・4%に上った。都議選前に報道機関が実施した世論調査では、都民の約55%が基本方針を評価していたのに比べ、ギャップが浮き彫りになった。基本方針は職員の間で、移転反対派と推進派に配慮した「折衷案」、「都議選で議論を封じるための選挙対策」などの批判が多かった。   =4面に「自由意見」

「行政手続きを無視」
 小池知事が6月の臨時会見で発表した基本方針は「築地は守る、豊洲を生かす」という内容で、二つの市場を両立させる考えを示した。これに対し、50代課長は「両市場の活用案は響きがいい」として、都民受けする内容だったと分析する。
 一方、職員が基本方針を評価しない理由は、「(知事の決断が)中途半端」という意見が目立った。
 40代課長は「移転賛成派・反対派の双方にいい顔をすることが第一の目的で、本当に市場のことを考えているようにはとても見えない」と批判。50代部長級以上も「築地市場の残留希望の方に期待を持たせてしまい、かえって混乱のもとになるのではないか」と危惧する。
 また、方針のまとめ方にも批判は多い。都議選告示の3日前に発表されたことから、大方の職員は「選挙対策」と分析する。当時は知事と対立を深めた自民党が「決められない知事」と批判しており、「都議選直前に表明することで、議論を封印したかったのでは。(豊洲に)移転しなくては、公明党の(選挙)協力を得られなかった」(40代課長)との指摘や、「選挙で勝利するための方針」(30代課長代理)、「都政にとって最良の選択ではなく、自らの政治生命にとって有効な選択」(40代課長代理)との見方につながった。
 知事が移転延期を決めてから基本方針を発表するまでの間、移転問題を検証する市場問題プロジェクトチーム、豊洲の地下水対策を検討する専門家会議、移転問題を総点検する市場のあり方戦略本部が設置され、議論を重ねてきたが、基本方針は知事と特別顧問が決めたとされる。6月の臨時会見で、小池知事は「一つひとつ行政手続きをこれまで踏んできた」と話していた。20代以下の一般職員は「(知事は)行政手続きを重視するとしていたにもかかわらず、市場のあり方戦略本部などの(総点検を踏まえて知事が総合的に判断する)行政手続きは無視された」と非難。また、40代課長は「多くの関係者を巻き込み、時間をかけて検討させた割には将来のあるべき姿を見据えた大局的な判断には至らなかった」と不満を漏らしている。

「財源確保の説明なし」
 さらに、実現性の面からも基本方針を批判する声がある。都は豊洲整備に当たり5884億円をかけ、当初は築地市場跡地(4348億円)を売却して賄う計画だったが、豊洲移転後の収支見通しとして優位性が高いとされた築地の長期貸し付けに見直した。都によると、年間160億円の賃料を見込んでいるが、再開発が終了するまでは賃料収入がなく、「どう財源を確保するか説明がない」(40代課長代理)、「費用負担などのスキームを検討せずに再開発を進めることは問題」(50代課長)などの厳しい意見が寄せられた。
 都は4~5年後に築地再開発の着工を見込んでいるとの報道もあるが、2025年には中央卸売市場が豊洲整備で発行した企業債の返還がピークを迎え、再開発の時期と重なる可能性が高く、「両地区の借金をどう返済するのか」(50代部長級以上)との懸念も出ている。
 移転反対派と推進派に配慮した基本方針のしわ寄せは早くも出ている。知事は築地跡地に食のテーマパークを整備する考えを示したが、豊洲新市場の敷地内に整備する観光施設「千客万来」の事業者が競合することを理由に、撤退も含めて検討している。30代課長代理は「千客万来施設など、築地再開発による影響を考慮しているとは思えない」と問題視した。
 食のテーマパークは、仲卸業者が豊洲に移転後、築地に戻って営業するための施設だが、職員アンケートでは卸が豊洲に残る「二つの市場」に異論が噴出。卸と仲卸の取り引きが非効率的となることから、「二つの市場の成立はあり得ない」(50代部長級以上)。
 基本方針の決定に関しては、「築地ブランドに固執し過ぎ」(50代課長)との指摘も出ているが、「せめて方針を決定する前に職員に相談していれば、もう少し的を射た決断ができたのではないか」(20代以下一般職員)と、悔しさをにじませる意見も寄せられた。
 一方、「評価する」の意見では、「中身はともかく、ようやく決断していただいたことのみうれしい」(40代課長)、「知事が決断したことは尊重したい」(40代課長)に加え、「築地の土地を売らないという選択も大局的には理解できる。市場会計の資金繰りの観点のみから売却ありきで決めることには慎重であってもいいと思った」(50代部長級以上)などがあった。

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