都政新報
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宙に浮く移転~豊洲市場の開場延期(2)/無視された提言/二度否定された地下案

 
   豊洲新市場の建物地下に盛り土がされていなかった問題で都が直面する検証課題は、現在の工法で市場の安全が保証されるのかという点と、地下空間の利用が有識者会議などの検証を経なかったという手続き上の瑕(か)疵(し)だ。
 当時、盛り土の必要性を提言した土壌汚染対策専門家会議の平田健正座長は17日に会見を開き、「提言の前提条件が崩れており、再度検討する必要がある」と語った。同氏は小池知事の求めに応じ、安全性を調査する専門家会議の座長として再び検証を開始する。
 豊洲新市場建設予定の土壌汚染対策に関する専門家会議は、同地の深刻な汚染が発覚後、2007年に石原都政下で設立された。
 第1回の会議で平田座長は、ベンゼンなど揮発性有機化合物は気化して建物内に侵入する可能性があることから、地下に構造物を作ることには否定的な見方を示しており、同年7月に敷地全体の盛り土を含め、都に対策を提言した。一方、当時の石原都知事は莫大(ばくだい)な対策費用を問題視し、同会議解散後に汚染対策の具体的な工法などを検討する技術会議を発足させる。
 技術会議で都と委員が共有していたのは、安全性とコストを両立させることと、そのための新技術の採用や工法の工夫だった。費用面での効率化に加え、敷地全体の地下水全てを環境基準値以下にする方針を示すなど、より一層の安全性確保も果たしている。有識者会議の提言から「前向きな工夫や変更」が許されていたことが分かる。
 だが、技術会議でも地下空間利用は肯定されていなかった。「埋め戻さず地下空間を利用するという案だが、空間の価値をどの程度とするのか。算出方法はあるのか」。2008年11月5日、豊洲市場の土壌汚染対策を検討する第6回技術会議で、民間から提出された土壌汚染対策案のうち、建物の地下を空間利用する案について、委員は安全性ではなく費用対効果の面から都担当者をただした。地下の利用方法として、会議で挙がったのは駐車場として活用することで費用を回収するアイデアだ。だが、駐車場として整備した場合の有効天井は2・5メートル程度で、トラックなどは入れないことが分かった。
 その後、12月25日の第9回技術会議で、都側は「土地の利用、機能、価値の問題が経費に対して十分にプレイバックされない」として、地下案を見送っている。ここでも安全性が議論に挙がることはなかった。 
■認識共有されず
 実際に建設された豊洲新市場には、4~5・5メートルの地下空間が存在する。両会議で否定された地下施設が復活したのはなぜなのか。
 地下の存在が発覚した後、都議が中央卸売市場に対して説明を求めた際、中央卸売市場の担当者は「水産仲卸では清掃などに水を使用するため、配管設備が必要になる。水を流すための斜度や、人が作業できる空間も確保した」と説明。地下の存在を問題視する様子はなかったという。
 取材に応じた別の幹部は「地下空間の話は全く知らなかった」と明かす。一方で、現場には実情を把握していた職員もいたとして、「現場の担当者と事務方で認識が共有されていなかった」と、都議会や都民に誤った説明を続けてきた原因を語った。
 技術会議で地下空間利用が否定されてから3年後の11年10月18日、第15回の技術会議では、建築物予定箇所には盛り土をしない形での工事完了報告がなされている。地下の存在が同会議で議論に挙がることはなく、地下空間の設置は「ごく当たり前の工法」としか認識されなかったことが分かる。
 「そもそも大規模建築物には地下施設が必須」と説明する職員もいる。盛り土が行われた土地は地盤が不安定なため、数年間置いて安定を待つか、地下の硬い地盤まで届く基礎が必要になる。費用対効果の面から考えれば「最初から建物地下には盛り土をしない」という選択肢も浮上する。だが、分厚いコンクリートで気化した汚染物質の封じ込めが可能なのか、安全性の検証はされていない。
 食品を扱う豊洲市場の汚染対策は、国が定める安全基準よりも厳格さが求められている。都担当者は、結果として事実と異なる説明を続けていたことに関して、「思いが至らなかった」と釈明している。ずさんの一言で片付けるには、都が社会から受けた信用の損失はあまりにも大きい。
 

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