都政新報
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宙に浮く移転~豊洲市場の開場延期(1)/消えた盛り土/「地下空間」で揺れる信頼

 
  
 小池知事が築地市場の移転延期を打ち出してから、わずか2週間足らずで噴出した豊洲新市場の盛り土問題。都は、東京ガスの工場用地だった建設予定地から環境基準を大きく超える土壌汚染が確認されたため、専門家会議の提言を受けて、敷地全体の土壌を入れ替え、盛り土を行う建設計画を進めてきたはずだった。安心・安全を支える地盤となるはずだった盛り土が行われていなかったことで、再び大きく揺れ始めた市場移転問題の本質とその行く末を追う。

 「豊洲新市場に『謎の地下空間』がある」
 知事が豊洲新市場の移転延期を決める1週間以上前、タブロイド紙がそう報じたことが問題発覚の発端だった。情報を提供したのはテレビにも出演する有識者で、これまでも新市場の使い勝手や耐荷重について問題提起をしてきた。当初は地下空間を造成するコストや、耐震性を問題視していた。
 8月下旬、同有識者から情報提供を受けた共産党都議団の幹部は「市場の下には盛り土があるはず。地下空間なんて聞いていない」と驚きを隠せなかった。都民と同様、都議会は都から「敷地全体で汚染土壌を2メートル入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする」と説明を受けてきたからだ。
 8月25日に同党幹部が都に豊洲新市場の図面提供を求め、地下空間の存在をただしたところ、「建築物の管理のため、地下があるのは珍しいことではない。ないほうが珍しいのでは」という趣旨の返答があったという。提供された図面には、確かに主要棟下部に地下空間が用意されていた。
 特に水産仲卸棟では真水や海水をつかって洗浄を行う必要があり、地下空間を利用した排水管と、その中を水が流れる勾配が必要と都は説明。都議団は9月7日に同市場を視察し、地下空間の入り口にも立ち入ることになった。
 担当者に連れられて水産卸棟の片隅にある階段を降り、地下空間への扉を開くと「湿気ったような、これまで嗅いだことのない臭いがした」(同党幹部)。換気設備はなく、酸欠の危険性があると説明する職員もいた。配管が巡る地下には1センチ程度の水がたまり、水面が薄暗い室内を反射する。水の下に敷かれたコンクリートの表面には、その下にある砕石層の形が浮き出ているほど薄いものだった。このコンクリートは都の指示ではなく、工事業者が作業をしやすくするために自主的に施した。
 水がたまっている理由について、現地随行職員からは「地下水管理システムが動いていないため」と説明があったが、後日、本庁に確認すると、「システムは動いていた」と訂正を受けた。実際には、システムは試運転中だった。
 地下空間の存在を問題視した共産党都議団は週明けの12日に会見を開く予定だったが、10日になって一部報道機関が豊洲市場で盛り土がされていない事実を報道した。都幹部は新聞報道で初めて盛り土がされていなかった事実を知り、小島敏郎特別顧問らに連絡。情報が小池知事に伝わり、同日夕方に緊急会見が決定した。「当然、共産党が視察した時点で、都は問題視されることが分かっていたはず」と同党関係者はいぶかしむが、都側が素早く反応したことで事態は急速に動き出した。 ■「知事も知らぬ地下」
 小池知事は10日の会見で、「説明してきたことと事実は違う」とこれまでの都の説明を訂正。地下空間があることで土壌汚染対策に影響を及ぼすのか、2008年に盛り土による対策を提言した有識者会議の平田健正座長らに改めて調査を依頼するとともに、都都政改革本部の小島特別顧問をヘッドとするプロジェクトチームで、誤った説明を行ってきた経緯と原因を究明するとした。
 小池知事は8月16日、新市場で地下水モニタリング施設などを視察している。だが、知事に近い人物は今回の「地下空間」について、「知事も知らなかった事実。豊洲市場視察の際にも立ち入っていない」と説明した。だが、8月末の市場移転延期を決定した時点で、こうした設計上の食い違いが知事の念頭にあったと見る関係者もいる。
 これまで、豊洲新市場で行われてきた水質検査や大気検査で、環境基準を超える汚染物質は検出されていない。だが、それでもかつて基準の1千倍もの汚染土壌があった土地の市場に対して、くすぶる不安を払拭( ふっしょく)するための根拠が、有識者会議の提言に沿った過剰とも言える汚染対策だった。それがないがしろにされたことは間違いない。
 15日、知事は都幹部に原因究明と安全性の確認を指示し、リオデジャネイロへ発った。「人が一生涯、この地に住み続けても健康に影響はなく、市場用地としての安全・安心も確保されます」(都中央卸売市場HP)とうたった「手厚い対策」の根底が揺らいでいる。

 

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