都政新報
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23区創生~「1億人時代」の将来像(2)/地方との温度差/見過ごせぬ住民の無関心

 
   「実際に過疎にあえいでいる地方と、人口が増えている東京に、温度差があるのは当然」─7月に「VS東京『とくしま回帰』総合戦略」の名称で地方版総合戦略を策定した徳島県。地方創生局の担当者は落ち着いた口調でこう語る。
 同県は6月に市町村との連絡会議を開いて県の総合戦略と人口ビジョンの素案を説明するなど、「市町村の策定作業に考慮し、出来る限りスピード感を持って当たることを念頭に置いた」という。その理由の一つにあるのが上乗せ交付金の存在だ。自治体が総合戦略と人口ビジョンを策定する際、その作業に充当できる地方創生先行型交付金のうち、国は300億円規模で上乗せ交付分を設けた。
 この上乗せ交付分は、▽先駆的な事業を行う自治体を対象に都道府県5億円、市町村5千万円を上限とする「タイプ1」▽今月30日までに総合戦略と人口ビジョンを策定した自治体を対象に1千万円を目安に交付する「タイプ2」─の2種類がある。徳島県ではタイプ2の交付を目指す市町村に配慮した形だ。「県内の約半分の市町村が申請した。市町村にとって1千万円の違いは大きい」
 これに対し、23区でタイプ2を申請しようという動きは見られない。現在、素案のパブリックコメントを行っている新宿区は「第3次実行計画素案と併せて策定作業を行ったため、整合性を図るには10月策定は難しいと判断した」(企画政策課)という。有識者や公募区民らで構成する検討会を6月から立ち上げて策定作業を進める北区は「十分に検討を進める上で、10月中の策定は最初から念頭に無かった」(企画課)と語る。ただ、地方で続々と策定される総合戦略を見ると、基本構想や基本計画から逸脱している自治体はなく、即席で作られた印象は受けない。地方から見れば、こうしたことが温度差に映るのかもしれない。
 しかし、23区が地方創生に対する意欲に欠けるかと言えば、必ずしもそうとは言えない。
 まち・ひと・しごと創生本部は27日に交付決定した上乗せ交付金タイプ1で、23区からは杉並、荒川、練馬区の3事業に合計8213万円が交付対象に含まれた。いずれも地域づくりや産業振興に関する事業だが、女性の雇用などで独自の取り組みを行う小規模事業者向けの補助制度に3700万円の交付が決まった荒川区は、「可能な限り交付金は取りにいくということもあるが、小規模事業所の支援など区が出来る取り組みをしっかり進めることが重要」と気を引き締める。
 また、区長会の「特別区全国連携プロジェクト」では、交流事業の検討を進める北海道町村会から道南西部の檜山管内7町の1事業と当別町・新篠津村の1事業の2事業合計で4114万円が交付決定された。区長会事務局では「今年度中の事業実施で打診を受けた。今後、具体的な協議を詰める」としている。
 その一方、地方との温度差に関し、23区で見過ごせない問題がある。地方創生に対する住民の関心の低さだ。
 「地方創生という言葉は、区民にとってイメージが湧きにくいのかもしれない」─地方版総合戦略と人口ビジョンの両素案に関する2カ所目の地域説明会を終えた新宿区企画政策課の担当者は、肩を落としてつぶやいた。
 同区は15日から実施しているパブリックコメントに合わせ、来年度からの2年間を期間とする第3次実行計画の素案とともに23日から10カ所の地域センターを会場とした地域説明会を開始した。しかし、参加者は初日が14人、気温が下がった26日は7人にとどまった。26日の説明会の参加者からは「説明会に参加し、区役所がしっかり仕事をしていることが分かっただけに、これだけ参加者が少ないのはもったいない」と周知の強化を促す意見も出されていた。担当者は説明会終了後、「施設整備など個別具体的な話の場合、こうはならない。範囲が広すぎることもあるが、区民の関心をどう高めるのかも課題と感じた」と語った。
 国は地方版総合戦略について、「住民や関係者の意見を広く反映させること」「住民の意見聴取などを行って検証すること」などとしている。各区が策定作業を進める中で区民に対してどのように戦略の重要性を示すのか。地方創生への意欲を図る試金石の一つになるだろう。
 

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