都政新報
 
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TOKYO2020五輪への航海図(3)/混迷の聖地(3)/デザイン先行、コスト度外視

 
   千代田区半蔵門のホテルの一室は、多数の報道陣でごった返していた。新国立の総工費の高騰が社会問題化してから初めて、デザインコンクールの審査委員長を務めた建築家・安藤忠雄氏が公の場に姿を現そうとしていた。
 コンペは2012年、ザハ・ハディド氏の案を「世界に日本の先進性を発信し、優れた日本の技術をアピールできる」と評価し、最優秀賞に選出。このため責任論が浮上したが、安藤氏は日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議を欠席し、「逃げている」との批判が出ていた。
 「同じ時間に大阪で講演があった。会議を欠席したのは申し訳ない」と安藤氏。「体調が良くなかった。膵臓と脾臓を全摘した」と告白したが、自ら進行を仕切る関西弁の快活ぶりは変わらない。
 総工費が2520億円に膨らんだことを聞き、「エーッと思った」と言う。ザハ案を選んだ理由については、「流線型で斬新なデザインで、何よりもシンボリックだった」と説明。「一人の人間として言えば、ザハ案を残してほしい」と未練を残しつつも、「値段が全然、合わないから、どうするかは徹底的に討論しなければならない」と語っ
た。
 安藤氏によると、審査の前提では五輪開催に求められる8万人の収容規模やコンサートを可能とする可動式の屋根など、「従来のスタジアムにない複雑な要求があった」という。「アイデアのコンペであり、徹底的なコストの議論にはなっていない」とも認めた。
 コストを度外視した審査方法以外にも、不可解な点は多い。JSCは国内外の新聞に広告などでコンペを告知したが、参加できる資格者のハードルは高く、1万5千人以上の競技場の設計実績などが条件だった。ある都幹部は「安藤さんが個人的に付き合いのある設計事務所にメールして限られた人から募った」と話す。
 安藤氏は石原元知事が重用し、16年五輪招致では晴海のスタジアムを構想。しかし、石原氏はやがて任せ切りにしてしまい、官僚が口を挟めない「聖域」となっていった。
 

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