都政新報
 
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達人の散歩道 スカイツリーを眺めて歩く浅草


▲桜橋から見るスカイツリー
  台東区教育委員会青少年・スポーツ課長 柴崎次郎

 台東区は「塔」に縁がある。浅草寺の五重塔を始め、浅草十二階と呼ばれた「凌雲閣」、大礼服姿の外交官がトレードマークだった仁丹塔、浅草寺裏に5、6年ほど開業していたスペースタワー、幸田露伴の名作『五重塔』に描かれた谷中五重塔などが思い浮かぶ。
 残念なことに、浅草寺五重塔以外は現存していないが、今、日本中の耳目を集めている新たな「塔」が隅田川のすぐ向こうに建設中である。そう、完成すれば自立式電波塔として世界一の高さ634㍍を誇る「東京スカイツリー」である。
 すでに東京タワーを凌駕し、日増しに高くなるのが台東区内各所から見ることができる。今回は、スカイツリーを眺められる浅草周辺散策をご紹介したいと思う。

 最初に寄りたいのが地下鉄銀座線2番出入り口そば「浅草文化観光センター仮案内所」。スカイツリーのビュースポットが紹介され、「おもてなしのこころ」で親切に案内してくれる。
 吾妻橋のたもとからベストビューエリアの隅田公園に入ると、隅田川越しにそそり立つスカイツリーが遮るものなく眼前に広がる。堤防をそぞろ歩いて言問橋、桜橋へと北上すれば、これからの時期、公園の新緑やアジサイなども一緒に楽しめる。
 歩行者専用橋の桜橋からは、頂上に向けて日本刀のようにしなやかなカーブを描く「そり」、柱の中央を太くした「むくり」といった日本の伝統文化を取り入れているスカイツリーの特徴をゆったり眺められる。

 桜橋からほど近くの待乳山聖天。隅田川を「大川」と呼ぶ人は少なくなったが、「大川の水と待乳山聖天宮は私の心のふるさとのようなものだ」と随筆『東京の情景』に記しているのは、『鬼平犯科帳』などの時代小説でおなじみの故池波正太郎先生である。聖天近くに生まれ、隣接する公園には生誕地碑が建てられている。
 池波正太郎記念文庫は、言問通りと合羽橋道具街との交差点そばにある。区立中央図書館に併設され、自筆原稿や絵、復元された重厚な書斎、万年筆やパイプなど遺愛の品々が展示され、文豪の雰囲気を肌で感じることができる。
 一休みは記念館少し先の『合羽橋珈琲』で。古民家再生の会社が開いた喫茶店で、白壁土蔵風の外観。スタンダードジャズが静かに流れる店内は、古い柱や梁に漆喰の壁で仕上げられ、居心地が良い。
 近所には、手作りの江戸昔菓子『梅源』があり、歌舞伎紋の形をした「小倉金花」をお土産に。
 合羽橋本通りに出れば、通りの真正面にスカイツリーがそびえる。街中では一番良く見えるところで、夏の下町七夕祭りでも知られている。
 国際通り方向へ進んで左にあるのが大正時代からの乾物屋『萬藤』。南極観測隊にも乾物を納めた老舗で、目印は店先の河童の像です。

 合羽橋本通りから国際通りを渡り浅草寺方向へ進むと、「六区通り」に出る。全長100㍍ほどだが、両脇の街灯には渥美清、萩本欽一、沢村貞子など浅草ゆかりの芸能人を紹介する写真と解説があり、一本一本見るのが楽しい。水の江瀧子の街灯あたりからは浅草公会堂の左にスカイツリーが見える。
 六区通り周辺にも新しい個性的な店がオープン。通りを少し入れば、イタリア北西部リグレア地方のひよこ豆料理が食べられるオープンカフェ『フェッテ パニッサ』。
 通りに面しながら、路地奥の狭い入り口、週末しか営業せずでなかなか気づかないのが、大正から昭和初期の生活骨董を扱う『東京蛍堂』。モボモガ御用達を謳う店内はアンティークな衣類や柱時計、眼鏡などが展示され、往時にタイムスリップしたミステリアスな感覚に包まれる。
 江戸町家風外観の伝法院通りに入ると、左手に浅草寺の鎮護堂がある。伝法院は普段は非公開で小堀遠州作と伝えられる庭園を見ることはできないが、鎮護堂の奥にある二体の大きな狸の焼き物のあたりから、柵越しに庭園の一部が見える。狸横の樹齢500年という戦災にも耐えた大銀杏も見応えがある。伝法院通りには、千両箱を抱えた鼠小僧がいるので探してほしい。
 運が良ければ、ちょんまげに天秤棒の屋台のいでたちで、よもぎあんの入った浅草焼きを売り歩く「木綿やさん」にこのあたりで会える。気さくな人柄で、惜し気もなく商売道具の屋台を担がせてくれるが、重さ50~60㌔㌘はあり、何とか立ち上がれはするもののバランスを取って歩くなんてことはとても無理。木綿やさん、恐れ入りました。
 仲見世柳通りに去年開店した手ぬぐいの店『くるり』では、一本のてぬぐいを本のように綴じた「手ぬぐい本」が人気。店先からもスカイツリーが見える。
 散策の締めはスカイツリーを眺められる食事処で。軽いものでという向きには、駒形橋たもとの『むぎとろ』の屋上ラウンジへ。日中は軽食と喫茶甘味のメニューがある。眼下の隅田川と頭上のスカイツリーという絶好のビューは立ち去りがたい。
 食べ応えがあり浅草らしいものをという方には、同じく駒形橋たもとの鰻の『前川』へ。池波先生もよく通った老舗。アーチが美しい駒形橋越しにスカイツリーを眺めながら、心地よい川風とともに味わう鰻は格別である。池波先生がこの情景を見たらどんな感想か、聞いてみたいところである。
 これからの季節は、三社祭や植木市などでますます賑わう。下町情緒溢れる行事とともにスカイツリーをご覧にぜひ台東区へお越しください。


▲前川の鰻とスカイツリー


お店メモ
■浅草文化観光センター仮案内所 雷門2―19―10
 電話 03―3842―5566
■池波正太郎記念文庫 西浅草3-25-16
 台東区生涯学習センター1階 台東区立中央図書館内
 電話03-5246-5915
■合羽橋珈琲 西浅草3-25-11
 電話03-5828-0308
■梅源 西浅草3-10-6
 電話03-3841-4147
■萬藤 西浅草3-5-2
 電話 03-3844-1220
■フェッテパニッサ 西浅草2-5-4
 電話03-3845-6695
■東京蛍堂 浅草1-41-8
 電話090-5438-4223稲本
■くるり 浅草2-2-2
 電話03-5830-3567
■むぎとろ 雷門2-2-4
 電話03-3845-1067
■前川 駒形2-1-29
 電話03-3841-6314


※「達人の散歩道 わが町ウオーキング」は区市町村職員の方による町歩き案内です。随時掲載していきます。お楽しみに(編集部)。
 

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